野村総研、社員によるワイセツ被害女性を“逆に”訴えた恫喝訴訟で実質上の全面敗訴
「訴訟資料を確認しましたが、こんなまともな根拠が何もない内容で、野村総研は被害者に対して提訴までしており驚きました。そして、野村総研は無条件で訴えを取り下げていますが、これは実質的に完全敗訴です。和解もせずに取り下げることは、訴えに理由が認められず、この裁判で勝てる見込みがまったくないことを自ら認めたと言ってよいでしょう。裁判経緯を見ると、野村総研側は全面敗訴が予想される中で、その判決を受けるのが嫌で、訴えの取り下げをして逃げたのだと思います」
●野村総研は謝罪、防止策を一切拒否
野村総研はこれまで、
「恫喝訴訟などではないのは明らか」
「原告(野村総研)の主張が認められるのは明らか」
だと、担当している弁護士4名を通じて裁判書面でも強硬に主張していたが、そこまでしたにもかかわらず、結局、無条件全面取り下げによる実質上の全面敗訴となったのだから、もはや恫喝目的の訴訟だといわれても仕方がないだろう。
訴えを取り下げた上で、被害者側への謝罪と犯罪的行為の防止措置をとっているというなら、野村総研の行為は企業としてのモラルがあるようにとれるが、取材した結果、野村総研は現在も被害者側への謝罪を拒絶したままであり、さらにY氏の処分も被害防止のための異動も拒絶し続けたままだという。
この裁判における、野村総研側の対応は、ひどいものだった。同社側は当初より「事実と違う」と述べており、被害者に対して巨額の「損害賠償金」を請求していたわけだが、その「事実無根であることの証明」も、「損害の立証」も、まったくできていなかった。さらに同社側は「相手(被害女性)がもう反論しないというなら、われわれの主張を書面で出す」という、後で嘘が露呈して弾劾されることを怖がった主張をしてきた。それも裁判所に認められず、提訴から約1年もたった2012年4月16日にようやく出してきた主張書面で、今度は被害額については「野村総研という法人の精神的損害なのだから立証の必要はない」という主旨の主張を行ってきたのだ。
法人の精神的苦痛といっても、その相場はせいぜい数十万円の前半であり、1000万円以上の請求とはいかにも法外な金額だ。野村総研の担当弁護士たちは日本4大法律事務所の一角、森・濱田松本法律事務所に所属しており、相場を知らないはずがない。この、故意に不当な請求をしている問題もクローズアップされ、本サイトでも報じている。
すると報道を受けて慌てたのか、野村総研は今度は2012年7月2日付で人事部のT氏の陳述書として「実は精神的苦痛だけではなく、野村ホールディングスやIYホールディングスがかけられた実損の損害だ、さらにインターネット上の書き込みの調査・監視を強いられたから、その費用を被害者に請求しているのだ」という主旨の主張を行ってきたのだ。
●まともな証拠がない
これについて、本資料を確認した都内の弁護士はあきれて言う。
「裁判で実損を請求して認められるには、違法性だけではなく、その損害の発生や因果関係、金額算定根拠を立証しなければいけません。しかし、本件では性犯罪者側が被害者側に対して損害賠償を求めており、そもそも違法性はもちろん、損害の発生も因果関係も何もまともな証拠がないのであって、こんな請求が認められるわけがないでしょう」
挙げ句に野村総研がネットの監視を勝手にしていると主張して、その費用を請求しているのだから、もはや笑い話のレベルといえる。
この裁判の弁護士は、森・濱田松本法律事務所の労働法とM&A専門のパートナー弁護士である高谷知佐子、上村哲史、山内洋嗣、増田雅史弁護士の合計4名の弁護団。ちなみにこの高谷弁護士は、オリンパス社で内部告発したことがきっかけで、不当な人事配置による報復をされたとした社員が同社と争った裁判で、オリンパス側の代理人となり、最高裁で全面敗訴となった弁護士だ(2011年8月31日東京高裁判決等)。その後、2012年1月27日、東京弁護士会はオリンパスに対して人権侵害警告を行っている。
その同じ弁護士が今度は野村総研の代理人としても、法外な請求を被害者に行った挙げ句、実質上の全面敗訴が確定したのだから、痛い黒星となっただろう。現在、高谷弁護士は、市民団体から懲戒請求も出されている。