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レナウン倒産が避けられなかった本当の理由…アパレル業界が露呈した“百貨店商売”の限界

構成=長井雄一朗/ライター
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レナウン本社(「Wikipedia」より)

 アパレル業界の老舗であるレナウンの経営破綻が衝撃を与えている。「ダーバン」や「アクアスキュータム」などのブランドで知られるレナウンは、5月15日に東京地裁から民事再生手続き開始の決定を受けた。負債総額は約138億円で、国内の東証一部上場企業の破綻は今年に入って初めてとなる。

 以前から経営悪化が続いていたレナウンは、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちとなり、販売が激減したという。東京商工リサーチの調査によると、新型コロナ関連の経営破綻は全国で170件(5月21日時点)発生している。「新型コロナの影響に関しては、アパレル業界は宿泊業、飲食業に次いで厳しい状況にある。レナウンの経営破綻は、百貨店に依存するビジネスモデルから脱却できなかったことが大きい」と解説する、東京商工リサーチ情報本部情報部の増田和史課長に話を聞いた。

新型コロナがなくても潰れていた可能性

――レナウンの破綻について、どう見ていますか。

増田和史氏(以下、増田) もともと苦境が鮮明になっており、最近は6期連続減収と、かなり厳しい状況でした。また、筆頭株主である中国の繊維大手・山東如意科技集団(以下、山東社)との関係が悪化していたという事情もあります。

 アパレル業界全体的に、昨年10月の消費税増税と記録的な暖冬の影響が響き、冬~春物の販売不振が続いています。そこに、新型コロナの感染拡大がとどめを刺したという構図です。また、レナウンの場合は主要販路が百貨店でしたが、今は地方を中心に百貨店の閉店が相次いでおり、百貨店自体の売り上げも低迷しています。

 3月に就任したレナウンの毛利憲司社長は「新型コロナウイルスで消費は経験したことのないような打撃を受けている」とコメントしていましたが、レナウンの経営状況を見る限り、新型コロナがなくても潰れていた可能性はあるでしょう。

――山東社も大手ですが、なぜレナウンを救済しなかったのでしょうか。

増田 山東社も、かなり厳しい状況に陥っています。一時はM&Aで欧米のブランドを積極的に傘下に収めていましたが、米中貿易摩擦の影響などで経営が厳しくなり、資金難も報じられています。

 また、レナウンの決算発表では、山東グループの取引先に対する売掛金約53億円の回収が困難になったことも明らかになりました。この売掛金については山東社が保証するとの確約を得ていたようですが、履行されていないようです。山東社には、もはやレナウンを支援する余力がなかったのでしょう。

――レナウンの財務状況はどうだったのでしょうか。

増田 表面上の自己資本比率は2019年12月期末時点でも50%近くを維持していましたが、減収や赤字が続き、キャシュフローがマイナスになり、資金繰りが続かなくなったことが問題です。B to Cであるアパレル業界は、日銭商売の面もあります。金融機関から資金調達しようにも、業績が悪化していたので融資を得られず、親会社からの支援も得られず、最終的には資金ショートしたかたちです。

――レナウンといえば、アパレル業界の名門です。今後、スポンサーを名乗り出る企業はあるのでしょうか。

増田 今はゼロベースでスポンサー探しを行い、同時に名乗り出る企業を待っているとしています。しかし、レナウンと同じビジネスモデルのアパレル各社が百貨店以外のセグメント収益を増やし、脱百貨店志向を強めているように、今後は経営の多角化が鍵となります。レナウンの問題は百貨店商売から脱却できなかった点にあり、今のレナウンをそのまま引き受けるのは難しいでしょうね。

――いわゆる百貨店商売も岐路に立っているということですね。

増田 これまで、アパレル業界は百貨店に出店することで、集客と売り上げを百貨店に依存していました。しかし、これからはオンラインショップの充実、人気ブランドのM&A、人が集まる駅ビルやショッピングモールなど商業施設への出店といった戦略にシフトしていく必要があるでしょう。

――レナウンの破綻による連鎖倒産の発生はあり得ますか。

増田 レナウンは地方に縫製関連会社を保有しており、今後の再建手法にもよりますが、雇用などへの影響が注視されています。一部の地方経済にも影響を及ぼす可能性はあるでしょう。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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