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経団連副会長・山内氏の大成建設にリニア談合疑惑…73歳・山内“院政”を続行

文=編集部
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大成建設が建設工事を担当した国立競技場(「Wikipedia」より/江戸村のとくぞう)

 大成建設は相川善郎取締役専務執行役員(62)が社長に昇格する。村田誉之社長(65)は代表権のある副会長に就く。就任は6月24日付。経団連の副会長を務める山内隆司代表取締役会長(73)は続投する。山内会長の“院政”は変わらない。

 大成建設の20年3月期連結決算の売上高は前期比6.1%増の1兆7513億円、営業利益は9.4%増の1677億円、純利益は8.5%増の1220億円と好調だった。20年に開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピック関連や再開発など旺盛な需要に支えられた。

 しかし、21年3月期の業績予想は、新型コロナウイルスの影響で受注が厳しい状況にあることや、建設計画の中止や発注時期の延期、全般的な投資抑制などで単体の受注高は8.9%減の1兆2200億円とした。受注が減っても、すぐに売上と利益の減少に直結するわけではない。タイムラグがあるからだ。それでも、いずれは業績の悪化となって跳ね返ってくる。

 連結ベースの売上高は17.2%減の1兆4500億円を予想。営業利益は51.7%減の810億円、純利益は54.1%減の560億円と半減する見通しだ。「コロナで売上高は約2割下押しされる」とみている。21年3月期を最終年度とする中期経営計画では、売上高1兆8700億円、最終利益1300億円を目標としていた。20年3月期の好業績をテコに目標達成に王手をかけていた。

 ところが、コロナ禍で中期経営計画が水泡に帰した。村田社長は5月13日のオンライン会見で、中期経営計画の目標の達成が困難となったため「執行部門の長としてけじめをつける」と述べた。引責辞任を臭わせたものと受け止められた。

 スーパーゼネコン4社のうち、大成建設と鹿島は21年3月期の業績予想を開示した。鹿島は5月時点で明らかになった影響だけを決算予想に織り込んだ。21年3月期の連結決算の売上高は前期比7.0%減の1兆8700億円、営業利益は15.9%減の1110億円、純利益は22.5%減の800億円を予想している。清水建設と大林組はコロナの影響を合理的に算定できないとして、業績予想の公表を見送った。

 コロナ不況で企業の投資意欲が落ち込み、メーカーやホテルの設備投資が変更になるのではないかと、スーパーゼネコン各社は懸念している。海外でも暗雲がたれ込める。欧米や東南アジアでコロナの感染を防ぐ都市封鎖(ロックダウン)が広がった。海外事業の拡大にも待ったがかかった。見通しを明らかにした大成や鹿島も、業績を下方修正する可能性がある。

相川新社長の父は「三菱重工の天皇」と呼ばれた相川賢太郎氏

 相川氏は経済人一家として名が通る。長崎県出身。1980年、東京大学工学部建築学科を卒業し、大成建設に入社。東京支店建築部長、執行役員九州支店長、常務執行役員建築営業本部長を経て、2020年4月から取締役専務執行役員。

 父親は三菱重工業名誉顧問の相川賢太郎氏。三菱重工の社長を1989年から3期6年、会長を2期4年務めた三菱グループの重鎮だ。第2金曜日に三菱グループの主要会社社長や会長が集まる「金曜会」が開かれるが、相川賢太郎氏は、その世話人代表を96年から99年まで務めた。三菱御三家である三菱重工、三菱UFJ銀行、三菱商事の3社が金曜会を仕切る。相川賢太郎氏は「三菱重工の天皇」と呼ばれていた。

 相川善郎氏の実兄が相川哲郎氏(66)。三菱重工が筆頭株主であった三菱自動車工業の社長に2014年に就任したが、燃費偽装問題が発覚し、責任を取らされるかたちで16年6月、社長を辞任した。

 相川善郎氏は村田氏と同じ主力の建築部門出身。前社長の山内隆司会長以来、3代続けて建築出身者が社長になる。相川氏は「短期的にはコロナの影響が大きい。外部環境や景気動向に影響を受けない会社を目指す」として、工場などの生産設備の企画から設計・施工、維持までを担うエンジニアリング事業を発展させる考えを示した。

“院政”を敷く山内会長のアキレス腱はリニア中央新幹線の談合事件

 大成建設は山内会長、村田副会長、相川社長の“トロイカ体制”となる。3人とも東京大学工学部建築学科卒の先輩・後輩。山内会長が院政を敷く体制という観測が大半だが、リニア中央新幹線の談合事件の敗訴に備えた布石といえなくもない。

 2017年5月、山内会長が経団連副会長に就いた。副会長がゼネコンから選ばれるのは初めてのことだ。ゼネコンは汚職、談合、事故などの不祥事が多かったため、経団連副会長になれなかった。東京オリンピック・パラリンピックの主会場である新国立競技場の建設と業界初の経団連副会長の座を手にし、社内は高揚感に包まれていた。だが、リニア中央新幹線の談合事件でつまずいた。

 17年12月、東京地検特捜部と公正取引委員会はスーパーゼネコン4社(鹿島、大成建設、大林組、清水建設)がリニアの品川駅と名古屋駅の見積額や入札価格を教え合っていたとして、独占禁止法違反の容疑で捜査し、翌年3月、法人としての4社と、鹿島と大成建設の幹部2人を起訴した。

 4社の対応は分かれた。大林と清水は、いち早く白旗を掲げて捜査当局に恭順の意を示した。課徴金減免制度を使って罪を自主申告したため、大林は罰金2億円、清水は罰金1億8000万円の有罪判決が確定した。かつて「談合の帝王」と呼ばれた大林組は、数々の談合事件で摘発された苦い経験がある。談合を認めてミソギを済ませたほうが得策と判断したといわれている。

 抗戦組の2社にも濃淡がある。鹿島は「起訴された事実を重く受け止める」とのコメントを出した。一方、大成は「起訴事実については独禁法違反に該当しないと考えている」と徹底抗戦の構えだ。「無罪」を主張する2社の裁判が東京地方裁判所で19年2月から始まった。

 大成が徹底抗戦しているのは、談合を認めれば、山内会長が経団連副会長の引責辞任に追い込まれることを危惧したもの、との受け止めが法曹界にはある。大林と清水が談合を認めている以上、大成が勝訴する可能性は低い。敗訴が確定すれば、山内会長と当時社長だった村田副会長が、そのポストに留まるのは難しくなる。それを見越した社長交代という、うがった見方が出ている。山内会長は経団連副会長の椅子を死守することができるのだろうか。

BusinessJournal編集部

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