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東京五輪組織委参与の間野義之・早大教授に聞く、新しい施設設計思想への転換

東京五輪、当初予算の6倍の2兆円に…破綻したコンパクト五輪、「引き算」の五輪で

構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト

間野 60点でも五輪は五輪、やれないことがないなかで、日本はオーバースペックになりがちなんだと改めて考えさせられました。確かに日本の最先端技術をショーケースとしてみせていくことはそれなりに大切ですが、五輪のために建設された施設は17日間の大会後、長い時間存続していかなければなりません。五輪の本大会である「五輪モード」と、それが終わったあとの「レガシー(遺産・遺物)モード」はきちんと峻別して、必要最小限のラインを見極める必要があります。

 80点を90点、90点を100点に上げるためには、ものすごいお金と時間がかかります。このあたりをもっとセーブ(抑制)してもいいのではないでしょうか。20年に向けてレガシーを意識した「引き算」の五輪であるべきです。

――東京五輪は当初、「コンパクトでお金をかけない」というのがテーマでした。

間野 東京は2度目の五輪を迎えます。発展途上国の五輪はハードがレガシーとして残る点が大きいですが、00年のシドニー大会にしても12年のロンドン大会にしても、先進国のレガシーはハードよりもソフト、無形なものをつくり遺していく傾向があります。ですから、1964年の前回東京五輪のよき思い出は大切にしながらも、それと同じことをもう一度やるのではなくて、成熟国家として無形のレガシーを残すことに舵を切るべきです。

 ハードには大会が終わったあとのことも考えて、ミニマムで対応していくという判断をしてもいいのではないかと思います。小池都知事も深く関与することになり、従来の右肩上がりで予算が膨らんでいくところから、下げていく方向に切り替えていく必要があると思います。

「プロフィットセンター」を目指す

――五輪開催後に施設をどう有効活用するのかということも重要なテーマです。

間野 スタジアムやアリーナの有効活用は重要なテーマで、実は9月26~30日にかけて行われている「スタジアム&アリーナ2016」(会場:横浜アリーナ)というイベントでも、このテーマでパネルディスカッションを行います。これまでそうした競技会の施設というのは、コストセンター(費用が大きな施設)としてとらえられてきました。これからはむしろプロフィットセンター(収益が大きな施設)として考えていく必要があると思います。収益をしっかりと生んでいくような設計思想や事業思想が求められています。

――それを実現するにはどうすればいいのでしょうか。

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