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ユニクロ、コロナ禍で圧倒的な強さを発揮…大幅減収からV字回復、懸念は韓国市場

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ユニクロの店舗(撮影=編集部)

 ユニクロが、ここにきて強さを見せつけている。6月の既存店売上高は前年同月比26.2%増と大きく伸びた。3~5月は大幅減となっていたが、一転して大幅増となっている。ユニクロにいったい何が起きているのか。

 5月までは一部店舗で臨時休業を余儀なくされていたが、6月はほとんどの店舗で営業を行うことができた。また、6月は気温が高い日が多く夏物商品の需要が高まったほか、中旬から下旬にかけて開催したキャンペーン「ユニクロ誕生感謝祭」が好調だった。こうしたことが好業績につながった。6月は引き続き高い客単価を実現(10.8%増)し、マイナスが続いていた客数は大幅増(13.9%増)に転じ、大幅増収となった。

 6月はマスクを販売したことで注目を集めることにも成功した。通気性などが優れる高機能素材「エアリズム」を使ったマスクを19日に発売したが、あっという間に売り切れになった。マスクを求める人で店舗はごった返し、「新型コロナウイルスの感染リスクが高い状態で売っている」といった批判の声もあったが、それはともかく、このマスクの販売で集客と注目を集めることに成功した。

 6月前までは厳しい状況が続いていた。コロナ禍の既存店売上高は3月が27.8%減、4月が56.5%減、5月が18.1%減と大幅減が続いていた。コロナ禍前も厳しく、2月こそかろうじて前年を上回ったものの、昨年9月から今年1月までの5カ月はすべて前年を下回っている。

 こうした状況もあり、運営会社のファーストリテイリングの2019年9月~20年5月期連結決算(国際会計基準)は厳しいものとなった。売上高にあたる売上収益は前年同期比15.2%減の1兆5449億円、純利益は42.9%減の906億円となった。大幅な減収減益だ。

 衣料品業界の王者、ユニクロも新型コロナには勝てないかに見えた。だが、6月は大幅増収を達成した。また、7月と8月は前年並みの売り上げを見込んでいる。こうしたことから、20年8月期通期の業績は小幅な減収減益にとどまる見込みだという。

 6月は先述したとおり、ほとんどの店舗で営業ができたほか、気候に恵まれたり、キャンペーンが奏功したことが好調な業績につながっており、やや特殊な状況だったといえる。そのため、6月の業績はコロナ禍におけるユニクロの実力を測るモノサシにはならない。では何がモノサシになるのかといえば、7月と8月が前年並みの売り上げを見込んでいることだろう。大幅な前年割れが見込まれる小売り企業が少なくないなか、前年並みを確保できる見込みが立ったというのは、コロナ禍における強さの証といえそうだ。

 コロナ禍では外出を控えて自宅で過ごす人が増えることから、衣料品はベーシックなものが好まれている。また、節約志向が強まることが見込まれていることから、低価格のものも好まれる。こういった衣料品を多く扱うユニクロは、コロナ禍に強いといえるだろう。実際、ユニクロではコロナ禍においてベーシックアイテムの需要が高まったという。これがユニクロのコロナ禍における強さの源泉となっているのだ。

 ユニクロの姉妹ブランドの「GU(ジーユー)」も、コロナ禍で強さを見せている。休業店舗が多かった4月は業績が落ち込んだものの、5月以降の既存店売上高はほぼ前年並みまで回復。6月は想定を上回るペースで回復したという。4月の落ち込みが響き3~5月の既存店売上高は27%減と大きく落ち込んだが、6月は自宅で着るための衣料品が好調で、16.4%増と大きく伸びている。

 こうしてユニクロとジーユーがコロナ禍で真価を発揮し、ファストリの業績を今後はけん引する可能性が高そうだ。だが、一方で海外市場の不透明感が強く、予断を許さない。

 海外のユニクロは、新型コロナの世界的な感染拡大を受け、各国で臨時休業を余儀なくされた。総じて厳しいが、ただ、国や地域によって多少の好不調の差がある。中国や台湾、香港で構成される「グレーターチャイナ」は、厳しいながらも想定よりも早いペースで回復したという。特に中国は海外において最大市場となっており、その回復が早いというのは朗報だろう。ただ、20年3~5月期は、北米が大幅な減収で赤字幅が計画以上に拡大したほか、欧州が計画を大きく下回る大幅減収となり赤字幅が拡大するなど、想定以上に打撃を被った国・地域が少なくない。

 そして深刻なのが韓国だ。新型コロナの影響のほか、日韓関係の悪化による不買運動の影響で、20年3~5月期は大幅減収で営業損益は赤字になった。店舗の減損損失を計上したことで赤字幅は計画以上に拡大したという。韓国はユニクロにとって重要な市場で、6月末時点の店舗数は中国(752店)に次ぐ173店を展開しており、19年8月期の売上収益は約1400億円にも上る。その韓国で不振が続いているというのは、気がかりだ。新型コロナもそうだが、日韓関係の悪化の影響で今後も不振が続くことが懸念される。

 韓国での不買運動は、日本政府が昨年7月に韓国への半導体素材の輸出規制強化を発表したことがきっかけで起きた。それから時間がたったが、ファストリは今年3~5月の韓国事業の業績に関して、日韓関係の影響が客数減につながったと指摘している。不買運動の終息も見通せず、韓国事業の視界は不良だ。

 韓国では、ユニクロと同様の理由でジーユーも苦戦が続き、撤退を余儀なくされている。韓国で展開しているジーユー全3店舗を8月前後に閉店し、店舗営業を停止する。7月末には通販サイトも終了する。ジーユーは韓国へ18年9月に進出したが、ユニクロに比べ同国での知名度が低く、新型コロナ前の水準に戻すのは難しいとファストリは判断したとみられる。

 このように、日本のユニクロとジーユーは、今後のコロナ禍において強さを発揮する可能性があり明るい兆しが見えているが、海外市場は不透明感が強く予断を許さない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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