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宅配ドライバーたちをパンクさせる、客の際限なき「おもてなし」要求…元ドライバーが告白

文=二階堂運人/物流ライター

宅配ドライバーの仲間、家族、そして自分への「おもてなし」

 こんな厳しい状況だからこそ、ドライバー同士の結束は強い。労働時間は営業所によるが、ドライバーのサービス残業の時間は、だいたい均等である。早く配達が終わったドライバーが、まだ終わっていないドライバーを手伝う。そのほかの面でも助け合い、無意識のうちにお互いが「おもてなし」をしている。

 せっかくの休みにも、疲労した体に鞭を打ち、家族サービスに精を出す。「家族の笑顔を見ると、疲れも、会社に対するインチキな『おもてなし』のモヤモヤも吹き飛ぶ」と、あるドライバーは言う。ドライバーたちは、自分に対する「おもてなし」を蔑ろにしている。つまり、宅配業界の「おもてなし」は、ドライバーの自己犠牲に支えられているのだ。

 だが、社会のすべての人にも、ドライバー自身にも、このことだけは早く気付いてほしい。自分の感情を偽ることが、いかに大きなストレスになるかを――。

 お客は「買ってやっている」「使ってやっている」と錯覚している。その商品を手に入れたお陰で、そのサービスを受けたお陰で、どれだけ恩恵を受けているかもわからずに。責任は、企業側や店舗側にもある。価格競争が終焉を迎え、今やサービス競争へと移ってきた。つまり、商品そのものよりも、付加価値で勝負する時代だ。持ちつ持たれつの精神が破たんしているのだ。

 声を大にして言いたい。「お客であるあなた自身も、労働者であることを忘れてはならない」と。
(文=二階堂運人/物流ライター)

●二階堂運人(にかいどう かずと)・物流ライター
建設業・広告業・不動産業を経た後、最大手宅配便会社に勤務。宅配ドライバーとして集配に携わり、14年の勤務を経て退職。宅配業界で得たネットワークをもとに宅配業界の現状、未来を現場の視点から発信し続ける。現在、モノから人に運ぶ対象を替え、タクシードライバーとして世間のつぶやきを収集中。運輸、物流の底からの視点で世の中の動向などを伝えている。

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