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静岡と徳島の「世界農業遺産」認定、実はモノスゴイことだと知ってますか?

文=山田稔/ジャーナリスト

認定後、特産品の生産や企業誘致、観光客が増加

 国民の間で認知度、注目度が高いのは、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が登録する世界自然遺産や世界文化遺産だ。日本では1993年の法隆寺、姫路城(ともに文化遺産)以降、20件が世界遺産として登録されている。内訳は文化遺産が16件、自然遺産が4件で、富士山は「信仰の対象と芸術の源泉」ということで文化遺産とされている。

 自然遺産や文化遺産の世界遺産に登録されると、日本のマスコミはノーベル賞並みの大騒ぎをするので観光客が殺到する。それに引き換え農業遺産は報道が地味なので、多くの国民は気付かないことが多い。

 同じ世界遺産なのに随分と格差があるが、農業遺産に認定された地域では、その後、どんな効果が表れたのだろうか。

 11年に佐渡市とともに日本で最初に認定された石川県能登地域では認定後、奥能登の4農協が同一の基準を設けた特別栽培米、能登棚田米づくりに乗り出した。13年からは能登全域を対象に能登米の取り組みを始めた。能登棚田米は化学肥料・農薬を5割削減した特別栽培、能登米は3割削減のエコ栽培でブランド化を図った。その結果、生産者の数、作付面積、出荷量ともに飛躍的に伸びたという。

 能登棚田米は13年に124トンだった出荷量が16年には270トンにまで拡大した。棚田保全活動の回数も増え、ある集落では保全活動がきっかけでボランティアにより祭りが復活するという、うれしい出来事もあった。また地域独自の一品認定制度を設け、能登の里山里海統一ロゴマークを使用した商品を販売中。能登棚田米、天然能登寒ぶり、奥能登揚げ浜塩など32品が選ばれている。

 地域のブランド力アップは企業誘致や観光客の増加にもつながった。

「能登の安心・安全を支持していただき、世界農業遺産認定後に27の企業や農業法人が進出してくれました。観光面では、奥能登の春蘭の里という地域で47軒の農家が展開している農家民宿(受け入れは1日1組)が好評で、年間に1万2000人ものご利用をいただいています。先日もイスラエルからの方がお見えになったそうで、外国人の方も増えています」(能登の里山里海 世界農業遺産活用実行員会事務局)

 決して派手ではないが、地域の活性化がゆるやかに進んでいることをうかがわせる。農業遺産に認定された後、価値を維持・向上させていくための保全活動やブランド化への地道な取り組みが功を奏しているケースといえそうだ。日本には各地に脈々と受け継がれてきた農林水産業の伝統と地域文化が残っている。世界農業遺産認定に限らず、国民の知恵、創意工夫で貴重な財産を継承し、地域の活性化につなげていきたいものだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

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