“釘師”や“ジグマプロ”が死語になりつつあるパチンコ業界。果たして、パチプロと呼ばれる「パチンコ・パチスロで生計を立てている人」は今、全国にどれくらい残っているのだろうか。
今回は、専業パチプロとして長く活動しながらコロナ禍を機に一線を退き、兼業パチプロになることを決めたK氏に「パチンコホールの現状」「打ってはいけないお店の特徴」などについて聞いた。
今の台は運任せで「ハイリスクローリターン」
――Kさんのパチプロ歴を教えてください。
Kさん どこからがパチプロと呼べるのか、難しいですね。学生時代に羽根モノや権利モノで勝ち方を覚え、その後は就職もせずにパチンコ、パチスロで生活費を稼ぐ日々。ラッキーナンバー制の頃は連戦連勝が当たり前。10万円以上突っ込んで50万円取り返すスロット4号機、5万負けからプラスに転じるパチンコMAXスペックの時代も、月単位では同世代の社会人の何倍も稼いでいましたね。
――荒いスペックは勝ちにくいイメージがありますが、そんなに勝てたんですね。
Kさん 荒いスペックは、羽根デジやミドルスペックと比べて“勝率”は下がります。ただし、上に振れたときの勝ち額が大きいので、トータル収支の伸びは比べものになりません。もちろん、運頼みではなく、機種選びやホール選びに時間をかけ、回る台を粘り倒すことで収支アップにつなげるという正攻法です。
――そんなKさんが専業パチプロを引退した理由は何ですか?
Kさん 近年、射幸性を抑える方向に業界がシフトしましたよね。たとえ期待値が低くても、昔みたいに少ない金額で長く遊べて、少しでも勝てるならいいんですが、今の台はハイリスクローリターンです。収支が安定せず、それこそまさに“運頼み”。だから、専業ではなく兼業の道を選んだのです。
――なるほど。そんなKさんから見て、現在のホールの状況はどう感じますか?
Kさん ありきたりですが、勝ち組と負け組にはっきり分かれていますね。大手をはじめ、きちんと戦略を練っているところはコロナ禍でもダメージは少なく、逆に「波に流されるまま」の思考停止状態のホールは、遠からず廃業することになるでしょう。
――その“戦略”とは、具体的にどんなことですか?
Kさん 主に新台ですね。新台の選定、導入する台数、新台を外す決定など。昔からパチンコホールは新台が売り上げの軸なので、その稼働によって利益が大きく左右されます。1台40万円ほどする新台でいかに稼ぎ、次の新台購入費用をつくるかが、店長もしくは本部の人のセンスが問われる大事な仕事です。
――大手の全国チェーン企業は、そもそも資金力があるので有利ですよね?
Kさん そうですね。店舗間で台を移動できるのも強みのひとつ。「この店舗はこの台の稼働がいいので、他の店舗から回そう」とか、旗艦店(グループの中心店舗)に人気台を集中させたり……。大手はメーカーにとってもお得意さんだから、注目の新台も優先的に納品してもらえます。
――確かに、新台が1週もしくはそれ以上遅れて導入されるのは規模の小さいホールが多いですよね。
Kさん 新台の購入で優遇されたいなら、本来はいらない台も付き合いで買っておく、いわゆる“機歴”が必要です。逆に、資金力のない中小ホールは、そうした事実上の“抱き合わせ販売”に応じることができず、後回しにされてしまうのです。
駅近のホールは避けるべき?
――では、ユーザー目線で見たとき、新台が豊富な大手のホールで打った方がいいのでしょうか?
Kさん そうとは限りません。考え方は人それぞれですが、少なくとも立地や機種ラインナップなどを見て判断した方がいいのではないでしょうか。個人的には、駅近などで“一見さん”の多いホールは敬遠します。なぜなら、黙っていても入れ替わり立ち代わりお客さんが来るので、甘くする必要がないからです。
――じゃあ、郊外店で打つべき?
Kさん いいえ(笑)、それも場合によりけりです。勝ちにこだわらない客層やお年寄りの常連が多く、近くに娯楽施設が少ない郊外店なら殿様商売ができますからね。
――では、何を見て優良店かどうかを判断すればいいんですか?
Kさん 常連がたくさんいることは必須条件です。それに加えて、新台入れ替えの頻度が高ければ、ある程度の体力があるホールと言えるでしょう。強い新台が最速で導入されているか、新台が1台や2台ではなくシマ単位で導入されているかもチェックポイントです。
――なるほど。
Kさん 普段からホームページやSNSを定期的にチェックしていれば、そのホールの傾向やちょっとした変化が感じ取れるはずです。
――他に気をつけるべき点はありますか?
Kさん 誠実なお店で打つことが大事ですね。
――誠実とは?
Kさん 資金力がないから最新台を買えないだけなのに、『いまだに人気の○○を導入しました!』なんて準新台を入れているホールなどです。特にスロット6号機ではユーザーの支持を集める台がなく、しばらくはパチスロ暗黒期が続くでしょう。それに対して、連チャン性能で目を引く台が多いパチンコの方が、今は“打つ価値あり”と言えます。
――先日、名古屋のホールで「お客様に満足していただける機種が出るまで、スロットは減台します」との掲示があり、話題になりましたね。
Kさん それは設置していても回収できる見込みがないので、経費を抑えるための苦肉の策なのかもしれません。でも、少しでも客から抜くために設定1の“地雷”をひたすら設置するホールと比べて、正直な営業だと思います。
――実際に打つときの注意点は何かありますか?
Kさん 当たり前のことですが、あらかじめ軍資金を決め、それ以上は深追いしないこと。むしろ、「回らない」と感じたら打つのをやめたり、打たずに帰ることも大事です。
――それがなかなかできない(汗)。
Kさん わかります。でも、本当のお酒好きは量を決めて嗜む一方、アルコール依存症は毎日浴びるほど飲みますよね。つまり、ホールに行くと打たずにいられないのは“パチンコ好き”ではなく、ギャンブル依存症か、ただ単に“お金が好きな人”なのです。
――耳が痛い言葉です。
Kさん まぁ僕も兼業パチプロになったとはいえ、今は普段はパチンコ動画制作の仕事をしているので、パチンコ業界にどっぷり浸かっていることに変わりはなく、人のことをあれこれ言えませんけどね(笑)。
(構成=山下辰雄/パチンコライター)