賃貸住宅大手の大東建託のアパートの建築請負契約をめぐり、特定適格消費者団体「消費者機構日本」が先月27日、解約時に申込金等の返金を受けられないトラブルが起きているとして、実態を把握するため同様のトラブルを抱える人に情報提供を呼びかけたのだ。同機構に話を聞いた。
「申込金というのは、最初に申込書を提出する際に必要になる30万円です。実際に建築請負契約をするまでの予約時に支払うお金です。契約を結ぶ前に解約した場合には、返金されない定めになっていましたが、私どもが申入れを行った結果、基本的には全額返金、地盤調査等を行った場合にはその金額を控除して返金すると約款が改善されました。
また、建築請負契約をする際には一定の金額を契約時金として支払うのですが、これも契約解除の際に契約時金に加えて損害を賠償するという定めになっていました。損害賠償金に加えて契約時金も戻ってこないという定めです。これも、私どもが不当だと申し入れて改善されました。
申込金に関しては2018年5月8日以降、契約時金に関しては同年4月1日以降に改善されました。それ以前に契約を解除して返金されていない人への返還を要請したのですが、それについては返還しないという回答でした。理由は消費者契約法は適用されないからということでした」
04年に設立された消費者機構日本は、全国に19ある内閣総理大臣が認定した適格消費者団体のひとつ。07年6月に施行された改正消費者契約法の団体訴訟制度により、消費者の利益を擁護するため、「不当な勧誘」「不当な契約条項」「不当な表示」などの差止請求権を認められている。また、16年10月から導入された新制度により、内閣総理大臣が認定した特定適格消費者団体は、金銭面の被害回復を求めて集団訴訟を起こすことができる。消費者機構日本は、消費者支援機構関西及び埼玉消費者被害をなくす会と並ぶ3つしかない特定適格消費者団体のひとつだ。
昨年6月に『大東建託の内幕』(同時代社)を上梓したジャーナリストの三宅勝久氏に、詳しい話を聞いた。
<2>クレーム続出の背景「大東建託と契約する前には、まず申込金として手付けの30万円を支払います。さらに、請負契約を結ぶと、契約時金として通常工事代金の2%、1億円なら200万円を、先に払った注文金30万円を差し引いて支払うことになっています。契約が解約になるのは銀行の融資が通らない場合などです。同業他社は融資が通る見通しを立ててから契約するのが一般的ですが、大東建託の場合は先の見通しがなくても、とにかく業績を上げるために、銀行融資より先に契約を取ってしまうのです。
そのため、契約は取ったものの、融資が付かなくて最終的に解約になるケースが発生します。その場合には、注文金30万円はまず返しません。契約時金も地盤調査などに使ったなどという理由で返さなかったり、わずかしか返金しないことがよくあります。それでクレームが相次いでいるのだと思います。
この手のトラブルが増えたのは、スルガ銀行のかぼちゃの馬車事件でサブリース商法(一括借り上げ家賃保証)に批判が高まり、銀行融資が厳しくなったのが一因だと思います。また、アパートが供給過剰になってしまい、契約をしたもののずっと融資が付かないまま塩漬けになっているケースが相当数あるようです。それらを解約すると、契約高が売上に計上されているので業績が下がる。それを嫌がって、絶対解約に応じるなと現場に圧力をかけて、塩漬けの契約をどんどん先送りしてきたと聞いています」
大東建託広報部に話を聞くと、以下のようなコメントが返ってきた。
「約款の変更は18年からですが、それまでも、合意解約についてはオーナー様に返金しております。確かに約款には返金しないとの記載がありましたが、それはオーナー様の都合でキャンセルになった場合です。融資が不調に終わるなどお客様の要因でないキャンセルについては、諸経費を差し引いた申込金、契約時金をお返しする対応をずっとしてきております。最近はアパートローンに対する銀行の審査が厳しくなっているのは事実ですので、そういうケースが増えているのは確かでございます。
基本的には契約をしないと金額が確定しないため、実際に融資を申し込むのは契約後となります。ただし、当然ながらある程度の試算ができておりますので、金融機関に事前の打診をして、融資の可能性を確認してから契約しております。しかし、基本的にはお客様からの情報を基に打診をするので、実際の融資申し込みの際に、別の借り入れがあったりして、融資が下りないというかたちで契約が不調に陥ることもございます。融資が不調に終わった場合でも、不必要な引き延ばし等はしていないと思っております」