このため、昨年7月8日、米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)はソフトバンクの長期格付けをジャンク債扱いの「ダブルBプラス」へ2段階引き下げた。続けて7月18日、米ムーディーズもソフトバンクの格付けを「Baa3」からジャンク債級の「Ba1」へ1段階引き下げた。
ソフトバンク自身の有利子負債残高も、スプリント買収時は2兆7582億円だったのが、買収後の9月末には8兆8401億円へと買収前の3.2倍に膨らんでいる。さらに、スプリントはLTEサービスのインフラ投資に、今後2年間で約1兆6000億円を必要としている。この間は投資先行のかたちになるので、ソフトバンクの有利子負債膨張が避けられない状況になっている。このため「14年3月期第3四半期の決算でも支払利息が1058億円と、前年同期の4倍に急増。これが15年3月期には約3000億円と、さらに増える見通し」(証券アナリスト)といわれている。
大手2社に行く手を阻まれ、4位のTモバイルに猛烈な追い込みをかけられているスプリントの経営を立て直すためには、LTEサービス網の早期全米展開が欠かせず、その資金を調達するため今後もソフトバンクの有利子負債膨張が避けられない。これが、市場関係者の間で「ソフトバンク成長限界説」が強まるゆえんだ。
この懸念に対して、ソフトバンク関係者は「スプリント買収後の当社のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に対する有利子負債は3倍程度。ボーダフォン日本法人買収直後の5.6倍に比べればかなり低い。スプリントの経営立て直しも孫社長が現地で陣頭指揮をしている。今後の設備投資資金や運転資金も、スプリントのキャッシュフローで十分賄える」と意に介していない。
市場関係者の懸念が現実化するのか、ソフトバンクの強気が今回も勝負を制するのか、今後の動向に注目が集まっている。
(文=福井晋/フリーライター)