すき家のスト騒動、果たして「失敗」だったのか?露呈した外食業界の3つの限界
「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。
5月29日、ツイッターを中心に呼びかけが広がっていた、牛丼チェーン「すき家」の従業員によるストライキが決行される日。筆者も、午後から実際に複数店舗を回って営業状況を確認したが、特段変わった様子はなく、いつも通りの光景が広がっていた。アルバイト店員にストライキについて聞いてみたが、「そんな連絡も回ってきましたが、私は元々今日のシフトに入っていたので気にしていませんでした」と、なんだか他人事のようだ。
インターネット上でも「ストライキ現場の写真」として、労働組合員らしき人が数名で「すき家スト決行中」と書いた垂れ幕を持っている映像が公開されていたが、事前の盛り上がりの割に大規模な展開はなかった。「実際に営業休止している店がある」という投稿もあったものの、ストによるものではなく、以前から継続しているリニューアルによる休業がほぼすべてであったようだ。
では、このストライキは「失敗」だったのだろうか?
筆者は、そうは思わない。いろいろな面で、世の中に気づきを提供する出来事だったからだ。特に、これまで誰も疑問にさえ思わなかった3つの点で外食業界の限界が露呈したと考えている。
●限界1 店舗・人員オペレーションの限界
すき家に限ったことではないが、外食、特に多店舗展開しているチェーン店の場合は極力オペレーションを簡略化し、マニュアルさえ覚えれば誰でも対応できるようにしている。単純作業であるため、高度な知識や経験は不要だから、採用対象となる母集団が大きい。
その一方で、仮に誰かが辞めても「また雇えば問題ない」というイメージに陥り、経営側にとって「誰でもできる」「代わりはいくらでもいる」と考えがちだ。結果的に「人を育てる」意識が低くなり、低賃金でこき使う悪循環が生まれる。
すき家のアルバイト採用ページには「がんばれば、がんばっただけのチャンスがあります。『もっともっと成長したい』『社員になってみたい』と思った方をすき家は応援していきます」と記載されているが、同じページに掲示されているキャリアステップ図を見る限り、よほどがんばらないと評価してもらえなさそうだ。何しろ、店長や複数店舗担当のマネジャーになっても契約社員止まり。それ以上の働きをしない限り、正社員にはなれないようだから。