主な内容は、三陽商会が製造・販売する「バーバリーロンドン」の婦人服と紳士服は15年春夏シーズンをもって終了。「バーバリー子供服」は15年春夏シーズン終了後に事業をバーバリーグループへ移管。派生ブランドの「バーバリー・ブルーレーベル」と「バーバリー・ブラックレーベル」は、15年秋冬シーズンより「バーバリー」ブランド名を外した「ブルーレーベル」並びに「ブラックレーベル」として事業を継続する。三陽商会がバーバリーと交渉してきた、15年以降の契約更新が叶わなかったためだ。
19日の記者会見で三陽商会の小山文敬副社長は、「今後は、バーバリーブランドとしての制約があった雑貨アイテムの増加もネット通販も可能となり、事業の自由度が高まる」と述べ、バーバリーとのライセンス契約終了は三陽商会成長の後押し要因になるとの認識を示した。
杉浦昌彦社長も「バーバリーブランドは偉大なもので、当社はこれまでバーバリーに支えられて成長してきた。その間もものづくり面でしっかりとしたノウハウを培ってきたので、独り立ちしても大丈夫だと思っている。これを機に、さらなる成長ができるだろう」と、バーバリー事業なき後の経営に自信を示した。
だが、株式市場は三陽商会の自信とは反対の動きを示した。発表翌日の20日には同社株に売りが殺到、一時210円と前日比20%安まで売られ、今年の最安値に沈んだ。証券アナリストは「非バーバリー事業の成長を前提にした、同社経営陣の楽観的な現状認識に対する『呆れ売り』」と厳しい見方を示す。
同社のバーバリー事業の売上高は非公開だが、派生ブランドの「バーバリー・ブルーレーベル」と「バーバリー・ブラックレーベル」を含めると、連結売上高の半分近くを占めると推測されている。同社が契約終了と併せて急遽発表した「中期5カ年経営計画」でも、バーバリー事業がなくなる16年12月期連結の売上高は850億円の計画。直近13年12月期売上高1064億円より20.1%減る見通しだ。営業利益に至っては20億円の赤字(13年12月期は71億円の黒字)に転落するなど、業容縮小の見通しを示さざるを得なくなっている。
同社は中計最終年度の18年12月期に売上高1000億円、営業利益50億円を数値目標とする業績V字回復シナリオを描いている。だが、経営陣の楽観的とも受け取れる認識と、成長を前提にした根拠のない「独り立ち」シナリオでV字回復できるのだろうか。
●三陽商会の過信
戦時中に使用された灯火管制用の暗幕を戦後、レインコートに加工・販売するビジネスモデルで事業基盤を固めた三陽商会は、1970年に獲得したバーバリーのライセンス契約をエンジンに成長、大手アパレルメーカーの仲間入りをした。そのため、業界内で「バーバリーがなければ、三陽はいまだに中小アパレル」と冷ややかな見方があるのも事実だ。
バーバリーは、欧州ではラグジュアリーブランド(高級ブランド)として、富裕層を中心にした市場で売られている。だが日本では、三陽商会が90年代に20~30代向けのディフュージョンライン(有名ブランドの普及版)として「バーバリー・ブルーレーベル」と「バーバリー・ブラックレーベル」を立ち上げ、バーバリーが日本のアパレル市場に定着した。