ベネッセ流出事件、原田社長の経営改革に追い風?高まる求心力、躊躇なく組織に大なた
原田氏はいうまでもなく、アップルコンピュータ社長から日本マクドナルドの社長へ華麗な転身を遂げ、「from Mac to Mac」といわれた名経営者です。アップルにはマーケティング部長として入社し(1990年)、97年に社長に就任しています。
原田氏がアップル社長時代に辣腕を振るったのは、数百社に上っていた取引先を数社の代理店に集約させたこと、そしてiPodとiPadの拡販に成功したことが挙げられます。両方の施策とも、原田氏がマーケティング畑の経験により着目して実践したものです。筆者もマーケティング畑出身の経営者だったのでよく理解できるのですが、限られた人数の社員で多数の顧客(アカウント)と直接取引しようとすると無理が出るものです。
●マクドナルドの営業利益を10倍に
そんな原田氏のマクドナルドへの転身は04年のことでした。IT業界からファーストフード業界へ、「from Digital to Stomach」という大転身でした。両社はまったく異なる業態・業種ということで世間的にはその転身を危惧する見方も多かったのですが、原田氏はマクドナルドの業績を大きく伸張させてしまいました。
原田氏の就任までマクドナルドの既存店売り上げは7年連続でマイナスでしたが、着任から8年連続の増収を達成し、11年度の営業利益は281億円に達したのです。その額は、原田氏着任直前の03年度の約10倍にも上りました。
既存店売り上げが増収を続けた裏側には、70%あった直営店比率をこの期間に30%にまで下げるという戦略的な着手と実践がありました。そしていずれにせよ、改革に対して強力なリーダーシップを発揮したことは間違いありません。原田氏自身が「自分は雇われ社長としては世界でも有数」(「月刊BOSS」<経営塾/2014年5月号>より)と自負を公言しています。
そんな原田氏が、今度は一転して創業2代目福武總一郎氏が大株主に名を連ねる、実質的なオーナー企業であるベネッセのトップに転身しました。原田氏のスカウトを果たした福武氏は、会長職から最高顧問へ退きましたが、次回は、原田氏がベネッセ再建を進めていく上で想定される懸念点を考察します。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)