詳しい説明を求める一部加盟店主に、本部側が激高する一幕もあったという。
●QUOカード窃取の手口
いったいSVの不正とは何か。関係者の話を総合すると、SVは自分の担当のファミマ店舗に行き、そこで売っているQUOカードを持ち出す。といっても、万引きではない。「QUOカードを貸して」と言って店員に指示し、レジでは「廃棄処理」する。つまり、QUOカードを会計上「捨てたこと」にするのだ。
「一定額以上のQUOカードの廃棄は、ファミマの会計では『営業雑費』の項目に入ります。SVは、そのマイナスを『来月、販促費として戻すから』と言うのです。廃棄額=販促費なら加盟店に実損はないのですが、きちんと埋めてもらえないことがありました」(加盟店主)
ファミマ本部側の説明では、SVは廃棄処理をせず、自分が持ち出したQUOカードの店間伝票を起票し、ある店舗から別の店舗に移動したことにする操作もしていた。「商品、現金の取得によって、当該店舗には棚不足(あるはずの商品がないこと)が発生します。しかし当該SVは、実地棚卸前に店間伝票を不正に起票する方法を繰り返すなどして、棚不足相当額を別の店舗に移し替え、不正取得の隠蔽工作をし、他の店舗に(も)損害を与えました」(店長集会での村井部長の説明)。いわば損失の付け替えが行われていたことを認めた。
●晴れない疑問
ここまでなら、「1社員(SV)の不祥事」と見えるかもしれない。だが取材を進めると、そうとも言い切れない事情が浮かんできた。
その一つが、このSVがなぜ簡単に「店間伝票を不正に起票」できたか、である。ファミマの店舗が発行する伝票には当然、その店舗の「検収印」がいる。不正をごまかす伝票にも、被害にあった店舗の「印」が押されている。「トラックで商品が入って来た時にすぐ押せるように、検収印はレジの周辺に置いてあり、スタッフなら誰でも押せます。それが悪用されたのでしょう」との見方が有力だが、別の声もある。
「ファミマには、わずかですが直営店もあります。他の店舗で売れないものを直営店に押し付けるため、SVが直営店の検収印を勝手に押すことがあり、そこで崩れたモラルが今回のような不正につながったのではないでしょうか」(業界関係者)
例えば銀行実務では、銀行員が顧客の印鑑を押すのは禁じられている。本部にとって加盟店は「独立事業主」であり「別の会社」。いくら店舗指導にあたる立場だからといって、別会社の判子を勝手に扱うのは許されまい。
筆者の取材に対しファミマは、「社員による不正があったのは事実。当該加盟店に実害を与え、他の加盟店にもご心配をおかけしたことはお詫び申し上げる。当該社員は、社内規定にもとづいて厳重処分した。再発防止については、全社員に事実を伝え社員教育を実施している」(広報グループ)と事実関係を大筋で認めた。