「報道後、本部は『社長が(マスコミ記者の)ぶら下がりに話したから、説明責任は果たした』と開き直っていましたが、『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社/9月6日号)でも報じられ、加盟店主からの質問状も届くなか、このままでは収まらないと判断したようです」(ファミリーマート関係者)
コンビニ本部と加盟店の関係は、建前上では「対等」でも実際には「王様と奴隷くらいの差がある」(別のチェーンの店主)とされる。加盟店が本部から始末書を取られるのは日常茶飯だが、本部のトップが加盟店に頭を下げたのは「これまで聞いたこともない」とファミリーマート関係者は口を揃える。
●説明求める被害者店長を強制退場させる
もっとも、大株主の伊藤忠からファミリーマート社長に転じた中山氏は潔く頭を下げた一方、具体的な説明に当たった高田営業本部長の説明は抽象的で、参加した加盟店主は「被害にあった加盟店主が質問をしたら、本部社員が取り囲み退場させてしまいました。一方的なやり方で残念です」と落胆する。
筆者の取材に対しファミリーマートは、「店長集会を開催したのは事実だが、弊社の加盟店向けのものなので、内容は一切公開していない。会の中でどういうことがあったかも言えない。当該SVは規定にもとづき人事処分したが、処分の内容も言えない」(広報グループ)との回答を寄せた。
個人の能力をいかに引き出すかをテーマに、中山社長は以前、こんなことを語っている。
「私の場合……メッセージを正確に受け取っていただくために、何よりも信頼関係を大切にしています。その信頼関係を築くために、『嘘をつかない』『約束を守る』ということを徹底しています。これは、お客様や社会に対して貫きたい姿勢でもあります」(ファミリーマートHPに掲載された6月18日付対談記事)。
質問した店主を店長集会から無理やり追い出すようなやり方をし、「お客様や社会に対して」は沈黙を続けたままで、中山社長が謝罪に込めたメッセージは「正確に受け取っていただ」けるのだろうか。
(文=北健一/ジャーナリスト)