富山の置き薬モデルに脚光?オフィス向け新ビジネス続々、福利厚生の充実に活用も
書店に行くと表紙に「ビジネスモデル」と書かれた本をたくさん見かけることができますが、それだけ人々の関心がビジネスモデルというテーマに再び(?)向いてきていることの表れだといえるのではないでしょうか。Google、Facebook、Amazonなどのビジネスモデルについて研究・分析することは非常に面白いですし、ためになりますが、日本で長年生き残っているビジネスモデルの1つである「富山の置き薬」モデルが、最近注目を浴びているのをご存じでしょうか。
おそらくオフィスの隅などに薬が詰まったケースを見たことが誰しもあると思います。その中には、近所のドラッグストアではあまり見かけない薬が入っていたりします。個人宅や事業所に薬箱を無料で設置し、使用した分だけ定期的に訪問したスタッフが集金をする薬の販売方法を「置き薬商法」「配置薬商法」などと呼びます。
このモデルの特徴は「先用後利」といわれ、「用いることを先にし、利益は後から」とした富山売薬業の基本理念だといわれます。さらに、この置き薬モデルで重要な要素として「懸場帳」(かけばちょう)があります。置き薬業者が回る地域を「懸場」(かけば)と呼び、その地域の顧客管理簿や得意先台帳のことを懸場帳と呼びました。懸場帳は優良な顧客、売れた薬の種数、家族構成、そして集金履歴が記録され、再訪問する際の服用指導や情報提供にも役に立ち、商売の管理に非常に重要なものとなっています。現代でいえば顧客データベースであり、経営に必須の情報を集約させた台帳でした。
これらからはともに、お客様との関係を重視して、短期的ではない長期継続的な関係を築くことをビジネスの主眼にしていることが読み取れます。他社の懸場帳はそれがあれば誰でも似たような売上高(貫高)が得られるため、のちには懸場帳自体が財産価値を持ち、業者間で高額取引されるようにもなったということであり、それだけ秀逸なデータが集約されていたことの証拠でしょう。
●オフィス街で応用パターンが人気
この長い歴史を誇るビジネスモデルは、現在も連綿と続いているのですが、オフィス街では応用パターンを見かけることが多くなってきました。
例えば、江崎グリコが展開する「オフィスグリコ」は都心を中心にだいぶ浸透してきています。これは、お菓子の小さな箱をオフィスに置いておき、必要な時に1個100円くらいで手に入れられるというサービスです。外に買いに行くほどでもないけど、ちょっとリフレッシュしたいとか、小腹がすいたから少しお菓子をつまみたいというシーンは確かにあります。そういう場合、外に出ることなく、オフィスの隅にあるボックスの中から1個手に入れて、カエルの口に100円を入れればOKという流れです。