9月19日に発売されて以降、大手携帯電話キャリア各社が熾烈な顧客獲得競争を繰り広げているiPhone 6/6 Plus。番号を引き継ぎ他社へ契約を変更するモバイルナンバーポータビリティ(MNP)による他社からの顧客獲得を狙い、各キャリアが過去にないほど高額な旧モデルの下取り価格を設定したことは大きな話題になり、各キャリアの販売店や家電量販店などの取扱店においては、さらにキャッシュバックを加えるなどの実質的な値引き合戦が過熱している。
確かに、旧モデルの高額下取りや、製品価格の独自値引き、高額なキャッシュバックをしてくれれば、契約者にとっては端末購入時の負担や毎月のランニングコストがかなり低く抑えられ、MNPによるキャリアの乗り換えは魅力的に見えるかもしれない。しかし、うまい話には裏があるものだ。
実は今、主に型落ちのスマートフォンを安価に購入できる代わりとして販売店から契約者に提示される“ある条件”が問題視されている。その条件とは、キャリアが販売店を通じて契約者に強制しているオプションサービスへ加入することだ。
例えば、留守番電話サービスや保証サービスなどは必要な人もいるだろうし、コンテンツサービスであれば初月無料、永年無料などの特典があるため、さほど大きな負担にはならない。それでも、欲しい端末を良い条件で購入するために必要のないオプションに強制的に加入させられている実態に対しては、以前から批難の声が挙がっていた。
そして今回のiPhone 6/6 Plus販売に当たっては、明らかに契約者の不利益になるオプション加入が義務付けられているというのだ。
そのオプションとは、契約者がデータ通信量の上限を超えた場合に1GB(1000円)ごとの追加データ通信量を“自動的に”購入し続けるというもので、NTTドコモでは「スピードモード」、ソフトバンクモバイルでは「快適モード」と呼ばれている。ちなみに、これらのオプションに加入しなければ、ユーザーはデータ通信量の上限を迎えた段階で追加容量を購入するかどうかを選ぶことができる。しかし、これらのオプションに加入させられることによって、契約者のデータ通信量は“青天井”となってしまい、「パケット定額制」そのものが有名無実化してしまうのだ。
●家族で乗り換えると、さらに危険
携帯電話の契約時には、販売員から加入しなければならないオプションについて一通りの説明があるので、表向きは契約者がオプションの内容を承諾してスピードモードや快適モードに加入したことになる。しかし、契約者の中にはオプションの内容を聞いても、よく理解しないまま、手続きを早く終わらせたいがために承諾する場合も多い。その上で「パケット定額制に加入したから大丈夫」などと安易にスマートフォンを利用していると、知らないうちにデータ通信量が追加され、高額なデータ通信料金を請求される“パケ死”のリスクを負うことになってしまうのだ。
ドコモとソフトバンクはデータ通信量を家族で分け合う「シェアプラン」への加入を推進しており、MNPにおいても家族でまとめてキャリアを乗り換える場合の高額なキャッシュバックを設定して、複数回線の契約獲得を狙っている。もしも、これにスピードモードや快適モードが追加された場合には、子どもが大容量のアプリゲームや動画閲覧などをすれば、すぐに“パケ死”に陥ってしまう可能性が高く、特に注意が必要だろう。
iPhone 6/6 Plusの販売に当たって各キャリアは、少しでも他社よりインパクトのある良い条件を提示するなど、あの手この手でMNPによる顧客獲得を画策している。甘い話に引き寄せられて、後で後悔しないように、高額キャッシュバックや端末代金の大幅値引きなどの魅力的な条件で売られているスマートフォンは、“強制加入オプション”などの契約者にとって不利益な条件が含まれていないか注意が必要といえよう。
(文=編集部)