「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/2月1日号)は『ど~した!? ドコモ』という特集を組んでいる。「日進月歩で進化を遂げてきた携帯電話。そのトップにはいつもNTTドコモがいた。iモードやおサイフケータイは消費者の心をつかみ、新しい機種が発売されるたびに心を躍らせ買いに走った人も少なくなかった。市場の評価も高く、一時は時価総額世界3位まで上り詰めた。だが、いつしかドコモは輝きを失い、そして成長に急ブレーキがかかっている。ドコモで何が起きているのか」という内容だ。
2013年9月、ついにドコモもiPhoneの販売を開始。ところが、スマートフォン(スマホ)の販売台数が想定ほど伸びない。当初の品薄状態から回復した「11月下旬~12月前半が思ったより伸びなかった」のだという。目標としてきたスマホの年間販売1600万台の達成は厳しそうだ。
先行き不透明な状況で、韓国サムスン電子、米インテルらと開発を進めてきた、新しい基本ソフト(OS)「Tizen(タイゼン)」を搭載したスマホの発売を延期した。米アップルの「iOS」、米グーグルの「アンドロイド」に次ぐ、“第3のOS”の搭載端末として、「ドコモ側は華々しくデビューさせるはずだった」ものだ。端末が出来上がっているにもかかわらず、市場全体が停滞している状況から、勝負に出ることを避けたわけだ。
●ソフトバンクに抜かれたドコモ
しかし、新聞各社の紙面上では、13年12月の契約数が「iPhone効果で2年ぶり、純増トップ」と、ドコモの好調ぶりを伝える文字が躍る。これにはカラクリがあるのだという。
「本誌調査によると、新規契約数から解約数を除いた『純増数』約28万件のうち、およそ15万件が“水増し”とみられる。この件数は、ドコモの通信網を借りて格安の通信サービスを行う、イオンやNTTコミュニケーションズ(OCN)などのMVNO(仮想移動体通信事業者)の純増数である」というのだ。
特集記事Part1『ドコモの栄光と挫折』では、安心のネットワークに、最先端の端末、独自インターネットサービス・iモードと、かつて通信業界を席巻したドコモモデルが、逆にドコモの成長を妨げている現状を紹介している。ソニーがウォークマンの、任天堂がゲーム端末の成功に無意識に縛られてしまったのと同様の光景が広がっている。
ソフトバンクの孫正義社長が、13年4~9月期の決算発表をした10月31日に「売上高、営業利益、純利益、どの角度から取ってもドコモさんを上回ることができた」と勝利宣言を行った。
こうした経営の数字だけでなく、つながりやすさでもドコモはソフトバンクに劣勢を強いられている。「つながりやすさナンバーワン」を目指したソフトバンクは、スマホのアプリを通じて、携帯電話の接続情報を収集、電波改善に活用してきた。月間10億件にも上るデータを分析するソフトバンクの子会社Agoopの柴山和久社長は、「ドコモは山間部では勝っているが、都市部に弱い。特に契約者数が多い都市部での輻輳(回線混雑)をクリアできていない」と指摘する。
しかし、ほぼ無借金経営ということもあり、「競争に負けているという認識すらない」というのがドコモの現状だ。
●根深いドコモ官僚主義
特集記事Part2『輝きを失ったドコモ』では、マーケティング力の決定的な弱さを紹介している。それは高速通信サービスLTEをめぐる商品展開に見られた。ドコモは10年末、技術的な言葉を使わずに普及させる狙いで、LTEを「Xi(クロッシィ)」という愛称でスタートさせたが、11年秋にライバル2社がLTEの名称で積極展開。あっという間にLTEという言葉が浸透して、「Xi」は「LTE Xi」と名前を変える始末だった。
本来、ビジネス開発とマーケティング部は「経営の両輪」なのだが、ドコモのマーケティング部は「各部署にその機能があり、下から上へと案件が上がってくるため、全体的なマーケティング戦略を立てて、下に落とすことができない」体制になっているのだという。