ドラえもん、キティちゃん…海外で大人気でも“稼げない”ワケ
(『ドラえもん2013カレンダー』
<小学館集英社プロダクション>)
21世紀には、軍事力・経済力を主体としたハ-ドパワ-よりも、文化・政治・外交を中心としたソフトパワ-の影響力が今後ますます重要になると指摘したのは、米国クリントン政権で国防次官補(国際安全保障担当)を務めた国際政治学者のジョセフ・ナイ・ハ-バ-ド大学大学院(ケネディ・スク-ル)教授である。
ナイはその国が持つ国力をハ-ドパワ-とソフトパワ-に分け、これからはソフトパワ-の重要性がますます高まることを提唱したのだが、このことはビジネス・産業・経済分野にも当てはまる。
(1)半導体・自動車・家電・エレクトロニクスなど、IT・先端技術からもの造りの製造業までのハ-ドパワ-
(2)ゲ-ム、アニメ、マンガ、音楽、映画、出版、食、ファッション、観光など、エンタ-テインメントやポップカルチャ-から伝統・文化産業までのソフトパワ-
日本は、これまで高度なもの造りの技術や製造業で圧倒的に強い国際競争力を発揮してきた。また、ゲ-ム、アニメ、マンガ、音楽、ファッションなどエンタ-テインメントやポップカルチャ-でも、「ク-ル・ジャパン」と海外で高い評価を受け、日本のソフトパワ-の国際競争力は高いといわれてきた。
日本のコンテンツ力は強いか?
ところが、近年もの造りのハ-ドパワ-では半導体、家電、液晶など、かつて日本のお家芸といわれたハイテク分野でも、中国・韓国・台湾など新興国に追い抜かれ、国際競争力をなくしている。それならば、ソフトパワ-ではどうか? ゲ-ム、アニメ、マンガ、映画などのコンテンツや、食やファッションなどのエンタ-テインメントなど、その文化水準やサ-ビス内容の高さから日本のソフトパワ-は強いといわれている。
はたしてそうか? 日本のソフトパワ-は本当に国際競争力が強いのか?
政府は、21世紀の日本再生国家戦略プロジェクトとして、
(1)高度なもの造りを中心としたハ-ドパワ-の再構築(復活)
と共に、
(2)成長戦略としてソフトパワ-の海外展開の強化
を掲げている。ところが、現実には日本のコンテンツは海外で人気を博し、高い評価を受けているにもかかわらず、その割に十分な海外収益を得ていないのが実情である。
日本のアニメが海外で人気があるのは、次のような理由からだ。
(1)低価格である
(2)キャラクタ-が魅力的で、絵が繊細できれいである
(3)スト-リ-性がある
アニメにキャラクタ-の魅力やスト-リ-展開の面白さを始めて導入したのは、米国のウォルト・ディズニ-である。日本では手塚治虫の作品が最初である。ディズニ-は、ミッキ-マウスやドナルドダックのような人気キャラクタ-を主人公にしたアニメ作品を次々とヒットさせて、アニメ・映画・テ-マパ-ク・物販(キャラクタ-グッズ)を一体販売する独自のビジネスモデルを構築。そのソフトパワ-を国内のみならず世界中で展開した。
成長ビジネスに結びつけられない