昨年秋、学校法人と教職員労組の団体交渉の席で労組側が裏金の存在を指摘して問題が発覚、第三者委員会を設けて調査をしていた。大阪産業大では学校法人として、森山氏らに対して刑事告訴も検討するほか損害賠償も求めていく方針で、「大阪桐蔭会計処理問題対応委員会」を発足させている。また、この裏金問題を受けて大阪府は3月26日、大阪桐蔭中高への補助金を20%カットすることを決めた。
筆者も森山氏には何度か取材で会ったことがある。最初に会ったのが2009年だった。大阪産業大が元本保証でないリスクのある金融商品に手を出して資産運用に失敗して多額の損失を出した際、森山氏は校長と兼任で学校法人の運用担当の一人で副理事長だった。森山氏は、ある経営コンサルタントを通じて筆者に接触してきたが、その内容は「私に責任はなく、学内の権力闘争に利用されている」といったものだった。大手証券会社の担当者まで同席させ、自分に責任がないことを証言させた。
しかし、後になって、森山氏の言っていることや、証券会社の担当者の証言には嘘が多く、騙されて不快な気持ちになった。そもそも最初の取材で面談の場所に指定してきたのが、大阪市内の高級フランス料理店だった。記者を接待して自分に優位な記事を書かせようということが見え見えだった。もちろん飲食代は割り勘にした。
●保護者からの提訴も
この取材を契機に筆者は大阪産業大の学校法人としてのガバナンスに興味を抱き、取材して批判記事を書いてきた。資料や証言も多く集めた。「井上久男」「大阪産業大」で検索すれば多くの記事が出てくる。常に内紛が絶えない組織だったし、金銭にまつわる不祥事も絶えなかった。
例えば、法人内で不透明な調達システムを変えようとしたり、教育改革を展開しようとしたりした法人ナンバー2の常務理事・事務局長が次から次に解任された。中には「微罪」にもならないような言いがかりをつけて、事務局長を懲戒免職に追い込んだケースもある。その事務局長は名誉棄損と不当解雇で大学を提訴。裁判では和解したものの、事務局長側の事実上の勝訴で、学校側は懲戒処分を取り消し多額の和解金を支払い、謝罪文をホームページに掲載した。この裁判では、事務局長に対してハニートラップを仕掛けてほしいと大学側から依頼され、それを断ったことを示す陳述書を証拠として女子大生が裁判所に提出した。尋常な大学ではない。
さらには、改革派教員を追い出すネタを見つけようと、探偵事務所に素行調査依頼の費用として100万円も支払っていたり、学校のブランドイメージを高めるために副学長にベストドレッサー賞を取らせるための予算が計上されたりと、およそ大学とは思えないお金の使い方だった。
出入り業者から法人幹部への付け届けも多く、ある関係者によると、警備会社は盆暮れの時期には、法人役員には現金30万円をお中元やお歳暮として届け、突き返す人もいたが、平気で受け取る人もいたそうだ。
教育機関としても不適切で、たとえば経営学部に新設された「アパレルコース」では実学重視を掲げながら、入学前に約束した内容の授業ができないため、学生と保護者が学校法人を相手取って損害賠償の裁判を起こしたこともある。この裁判の背景にも、内紛によって実学を教える教員を追い出し、予定していた授業ができなかったことがある。