
全国に広がる太陽光発電所の多くが、FIT制度開始から10年を経て「老朽化」という新たな課題を抱えています。発電効率が落ち、運用コストがかさむ中、「再生可能エネルギーをどう再生するか」が、日本の再エネ主力電源化を左右する喫緊のテーマになりつつあります。
その鍵を握るのが、既存設備を再構築し、高効率で再稼働させる「リパワリング」です。
この分野で先駆的な実績を重ねるブルースカイエナジー代表・上原 美樹氏と、レジル株式会社の安藤 圭祐氏が、リパワリングがもたらす再エネの未来を語り合いました。

開発、施工から保守までを一貫して担う
安藤:まず、貴社の事業内容と創業以来どのような強みを発揮されているのか教えてください。
上原:私が代表を務めるブルースカイエナジーでは主に太陽光発電所のリパワリング※1工事を含むEPC※2事業や開発事業を行っています。ブルースカイグループは親会社である一般社団法人ブルースカイホールディングスのもと、当社を含め3つの中核企業で構成される独立系のグループです。具体的には、ブルースカイエナジーが土地の調達から太陽光発電所や蓄電所の開発・施工のほか、草刈りや除雪、日常の修繕といった保守業務を担っています。
ブルースカイソーラーはO&M(運転管理と保守点検)の契約窓口を担う保守管理会社です。電気主任技術者などが所属し、保守業務をブルースカイエナジーに委託しています。
そして、グループにはもう1つ、ブルースカイアセットマネジメントという資産運用会社があり、主に私募ファンドの資産運用を行っています。これら3つの中核企業の他、ブルースカイソーラーが51%出資しているブルースカイインベストメントでは、インフラファンド投資法人の上場を準備中です。現在リパワリングで関わっている物件も、将来的にはこのインフラファンドに組み入れられるものも多いです。
※1: 太陽光発電設備の老朽化した機器を交換・アップグレードし発電効率を高めること。
※2: 「Engineering(設計)」「Procurement(調達)」「Construction(建設)」の3つの工程を一括して請け負う事業のこと。
安藤:リパワリングの技術について、貴社が特に力を入れている点について教えて下さい。
上原:一部の機器のみを交換する事業者もありますが、当社では、パネルもパワーコンディショナーもすべて交換します。集中型のパワーコンディショナーを分散型に替え、最新の両面発電パネルを導入。そのうえで裏面の発電効率を高めるため、下に白い反射シートを敷設する等をしています。ここまで包括的に行うのが当社の特徴です。
リパワリングを本格的に始めたのは2023年頃ですが、当時このレベルまで対応していた事業者はほとんどありませんでした。現在までに100か所以上、150メガワット超の実績があり、確実に収益率を改善できるデータも蓄積されています。
安藤:リパワリングのニーズは今、どのような状況ですか。
上原:当初は、グループで関わるファンドの物件を中心に手がけてきましたが、最近は外部の発電事業者からのご相談も増えています。
安藤:これまでは開発が一番の牽引役だと思いますが、ここからはアセットマネジメントやファンドなど、金融関連が伸びていくとお考えなのでしょうか。
上原:はい。今、経済産業省は発電事業者を集約しようとしています。当社グループでは、さまざまな個人投資家が持っていた発電所について、リパワリングなどを通して当社が取得し、インフラファンドに供給するなど、長期的かつ安定的に発電所を運用していくことを目指しています。
集約化をして、FIT(固定価格買取制度)が終了した後もPPA※3(電力購入契約)などでしっかり活用できる電源を誰が持つかというのは、その地域の方にも重要な問題です。今後、太陽光発電等の再生可能エネルギーが主力電源になっていくためには、インフラファンドなどを通して透明性のある運用をしていくべきだと思っています。
このインフラファンド、今は太陽光発電所がメインですが今後、蓄電所を組み入れることも検討していきます。蓄電所の開発も一緒に行うことで、再エネを安定化させ、日本の再エネ比率を高めることに貢献していきたいと思っています。
※3: 発電事業者と需要家(電力利用者)が結ぶ電力の売買契約のこと。発電事業者が太陽光発電設備を設置し、そこで発電した電気を電力利用者(需要家)が購入する仕組み。

FIT後の電源を「安価」に「長く」活用する。リパワリングが切り開く道
安藤:まさにこれからの事業だと思います。国のエネルギー基本計画で電源構成における太陽光比率の目標値が設定されていますが、日本のFIT発電所は2013年以降に一気に作られたものが大量にあります。FIT期間終了以降もこれらを有効に活用していかなければ、目標達成は困難になります。これらの太陽光発電所を、いかに長期的・安全かつ安価に活かしていくかが、事業者側の重要なテーマです。
これらのテーマを解決するには、FIT期間中から先々の電源の活用方法を考えることが重要であると考えています。特にリパワリングの技術は発電所の長期的な運用の観点から重要な技術であり、これからのトレンドになると考えています。
上原:太陽光発電は大規模開発できるような適地が少なくなっています。当然、我々も地域と共生できる発電所を作っていきたいですし、新しく土地を取得するだけでは国が目標として掲げる太陽光発電の量には到達できないので、リパワリングなどで既存の発電所を活用していく必要があるわけです。
当社も今は大規模開発を行っていません。新しく作っている発電所はすべて低圧のものや小規模な高圧という形になっていて、基本的には耕作放棄地などを活用しています。
安藤:貴社は業界の大手事業者とも提携して、開発実績を重ねられていることは素晴らしいことですね。
上原:当社がさまざまな発電事業者から選ばれてきたのは、やはり管理体制をしっかり整えていることが大きいと考えています。今我々は本社を入れると全国24カ所に拠点があります。そこに所属する保守業務及び電気工事に携わる社員や保安担当である電気主任技術者などは、基本的にはすべて自社グループ内の社員で構成されています。一部拠点人員が手薄なエリアなどは協力業者にお願いする事もありますが、多くのエリアでは自ら管理体制をきっちりと整備しています。
安藤:貴社は発電所の保有もされていますか。
上原:自社で持っているものもあれば、売却する事もあります。また、当社や関連会社が出資するファンドで持っているものも多数あります。今回、みずほ証券様と国内初の蓄電池を併設させた太陽光発電所を組み入れたファンドの組成なども行っており、それらはFIP(フィードインプレミアム)に移行しています。
最近では、新規で開発している発電所は小売電気事業者様と提携する形のコーポレートPPAが主流となりつつあります。
一方、FITの発電所、例えば昨年は九州ではかなり出力抑制があったので、当然収益率は下がっています。その中で今できることとして、九州の太陽光発電所4カ所で蓄電池併設の着工をしています。抑制がかかっている時間帯に電気を貯めておいて、他の時間帯にタイムシフトさせた上で売電していくという方法で、収益を改善していこうとしています。
蓄電池をつけない発電所に関しても、リパワリングの工事を行うことで発電量を1.2倍、1.3倍という形で上げていくことで収益を改善していきます。残存期間10年を切ったFITの発電所でも、FIT終了後にノンフィットPPA(Non-FIT PPA)※4の発電所として使っていけると考えています。
※4:国の固定価格買取制度(FIT)に依存せず、PPA(電力購入契約)モデルを活用して、発電事業者が建設した太陽光発電設備から企業が電力を購入する仕組みのこと。
リパワリング、蓄電池、ファンド。再エネ「主力電源化」へ描く未来図
安藤:レジルは小売電気事業者として太陽光発電所の電気を開発、調達して我々の需要家にお届けするという立場です。近年、需要家の間では、生グリーンの再エネ利用ニーズが高まっているので、これに向けて安定的な再エネ電源確保を一層強化しておく必要があります。なので、そのニーズに向けて証書(トラッキング付きFIT非化石証書)だけでなく、太陽光発電の開発や調達は重要なテーマです。
上原:先ほど再エネのニーズが高まっているという話がありましたが、一方で、電気代を高くしたくないという方がまだまだ多いという気もします。海外のトレンドまでは到達していないというか、日本独自の停滞感みたいなものがあるというか。PPAの単価が上がらない要因の1つになっているような気がします。真に再エネの価値を感じていただけるよう、がんばる必要がありますね。
安藤:最後に、貴社が目指す持続可能な再エネの活用という未来像についてお話ください。
上原:当社では<自然エネルギーを未来へつなぐ>というスローガンを基に、再エネの主力電源化と、それを次の世代に繋いでいくための取り組みに注力しています。大規模開発の伴わない農地の活用や既存発電所を活かすためのリパワリング、必要な時に再エネを利用できる蓄電池などを通して持続可能な再エネ活用に貢献していきたいです。あとはインフラファンドの取り組みを通して長期的に地域の方と一緒に共生できるような発電所や蓄電所を作っていけたらいいなと思っています。ファンドが上場した暁には、普段再エネにあまり触れ合っていない一般の方にも興味を持っていただけるとうれしいですね。

※本稿はPR記事です。