キングダム作者、罪悪感なき大悪人か…小島瑠璃子や不倫相手を生け贄に作品創作、芸術家の業
人気タレントの小島瑠璃子さんが交際宣言した19歳年上の漫画家、原泰久氏は、超人気漫画「キングダム」(集英社)の作者として有名だが、前妻と婚姻関係にあった2018年頃から元アイドルの女性とも交際していたと「週刊文春」(9月3日号/文藝春秋)で報じられた。
「文春」によれば、原氏は元アイドルの女性とNHKの教養番組で共演したことから交際に発展したという。この女性には当時婚約者がいたが、原氏の「妻とは別れるから、付き合ってほしい」という言葉を真に受け、婚約者ときっぱり別れたらしい。
しかし、原氏は結局この女性とは結婚せず、彼女は今年の春にひっそりと芸能界を引退。小島さんと原氏の熱愛が報じられた直後、この女性はツイッターに<許せないことがあった。5日間ご飯食べられず、眠れなかった>と投稿している。
天才画家ピカソを彷彿とさせる原氏の女性に対する仕打ち
「文春」の報道が事実とすれば、この女性に対する原氏の仕打ちは、天才画家パブロ・ピカソの40歳年下の愛人に対する仕打ちを彷彿とさせる。最初の妻と別居中だったピカソは62歳のとき、22歳の画学生フランソワーズ・ジローと同棲を始め、息子と娘を産ませるが、ピカソはなかなか離婚せず、フランソワーズは子供2人を連れて家を出ていき、別の男性と結婚する。
最初の妻の死後、ピカソはフランソワーズに結婚を申し込み、フランソワーズは離婚。だが、これはピカソの策略だった。ピカソは、彼女とは結婚せず、79歳で45歳も年下のジャクリーヌ・ロックと結婚し、91歳で大往生するまで添い遂げる。
フランソワーズに対する仕打ちは、彼女がピカソを捨てた唯一の女性なので、それに対する復讐だったのではないかといわれている。もっとも、フランソワーズもその後『ピカソとの生活』という暴露本を出版し、一矢報いた。
ちなみに、二番目の妻のジャクリーヌはピカソの死後自殺している。ピカソと関わった女性のなかには、もう1人自殺した愛人がいる。ピカソが45歳のとき、街で見かけて「肖像画を描かせてください」と声をかけた当時17歳のマリー・テレーズである。彼女はモデルになり、愛人になり、「妻とは離婚する」との約束も信じて娘を1人産むが、10年近くも日陰の身に甘んじ、別の愛人のもとへ去ったピカソに捨てられたのだ。
ピカソのやってきたことを振り返れば、アートディレクターの結城昌子氏の「ピカソは女性たちを生け贄にして20世紀の先頭を走りつづけたのはないかとさえ思うようになった」(『ピカソ 描かれた恋―8つの恋心で読み解くピカソの魅力』)という言葉も、決して誇張ではないといえる。
偉大なアーティストになるには大悪人でなければならない
ピカソと比べると、原氏なんか可愛いものだと思う。もちろん、元アイドルの女性は、「妻とは別れるから、付き合ってほしい」という言葉を信じて待っていたのに、原氏は前妻と離婚しても結婚してくれず、小島さんと交際するようになったのだから、自分が「最も稼ぐ漫画家」である原氏の「生け贄」にされたと感じ、それに対して怒りを抱くのは当然だろう。
その怒りを抑えられなかったからこそ、この女性は<作品と作家の人間性に乖離があることは往々にしてあるよねー(棒読み)>とツイートしたのだろうが、こういうことは決してまれではない。素晴らしい作品を生み出すアーティストが女性にひどい仕打ちをした話は枚挙にいとまがない。作曲家の三枝成彰氏は「偉大なアーティストになるには大悪人でなければならない」(『大作曲家たちの履歴書(下)』)と述べているほどだ。
この言葉は核心をついていると私は常々思っている。その理由として、偉大なアーティストになるほどの人は並外れた才能に恵まれているので、その才能に惚れ込む女性がいくらでもいることが大きいだろう。小島さんも原氏の才能に惚れ抜いているそうだが、そういう女性は相手の才能にひれ伏すものだ。
また、アーティストのほうも、創作のインスピレーションを与えてくれるミューズを求めつづけるのではないか。そして、相手の女性がインスピレーションを与えてくれなくなれば、ボロ雑巾のように捨てる。そういうことをためらったり、罪悪感を抱いたりするようでは、偉大なアーティストにはなれないのかもしれない。
さらに、「逆も真なり」という言葉通り、「偉大なアーティストだからこそ大悪人になれる」という側面もあると思う。アーティストとして成功し、富と名声を得れば,それが目当ての女性もたくさん寄ってくるだろう。また、「自分は特別な人間だから,普通の人には許されないことでも自分には許される」という特権意識も強くなるかもしれない。
さらに、たとえスキャンダルを起こしても、作品が素晴らしければ評価され、タレントや俳優のように干されることはない。世間も「あの人は天才だから……」と許すようなところがある。だから、偉大なアーティストが大悪人になりやすいのは仕方がないと思う。
小島さんは原氏の「最後の女」になれるか
小島さんは、「キングダム」の熱烈なファンで、2018年11月に『世界ふしぎ発見!』(TBS系)の収録で原氏に最初にあったとき、収録後に交換したサイン色紙に<一生ついていきます!!>と書き添えたそうだ。
「男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる」という言葉通り、小島氏が原氏の「最後の女」になれればいいとは思うが、その可能性は低いと思う。たとえ2人が結婚にこぎ着けたとしても、今後もっと若く美しい女性が原氏の前に現れれば、ピカソ同様、その女性のもとに走るのではないか。
なぜかといえば、原氏のような天才的なアーティストはインスピレーションを与えてくれるミューズを求めつづけるだろうし、そうしなければ素晴らしい作品を生み出すことはできないからだ。いわばアーティストの“業”のようなもので、偉大なアーティストの相手になるには、それだけの覚悟が必要なのである。
だから、小島さんと原氏の関係はめでたし、めでたしというわけにはいかないのではないか。ただ、あまり幸福ではない結末を迎えたとしても、そのときは『「キングダム」作者との生活』という暴露本を出版して、一矢報いればいい。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
中野京子『怖い絵―泣く女篇』角川文庫 2011年
中野京子『美貌のひと―歴史に名を刻んだ顔』PHP新書 2018年
結城昌子『ピカソ 描かれた恋―8つの恋心で読み解くピカソの魅力』小学館 2008年
三枝成彰『大作曲家たちの履歴書(下)』中公文庫 2009年