サッカーの世界で、類いまれな才能を持っている選手は、これまでも数多くいた。しかし、すべての才能が開花したわけではない。むしろ、多くの才能が開花する前に消えているといえる。
それはなぜか、答えは大きく2つある。良い指導者(もしくは大人)と出会えなかったことと、その才能の持ち主自身のパーソナリティーが大きく影響をしたことだ。もちろんほかにも、良い仲間など複合的な要素はあるが、この2つが及ぼす影響はとてつもなく大きい。
「乾は、本当にサッカーが好きで好きで仕方がなかった。思っていることがストレートに顔に出てしまったり、イライラしてしまうことはあったけれど、すべてはサッカーが好きだからこそで、成長のための努力は惜しまない子だった」
サッカー日本代表の乾貴士を高校時代に指導し、その才能を大きく伸ばした野洲高校サッカー部・山本佳司監督は、乾をこう評価する。山本氏が語るように、乾は努力を惜しまなかったからこそ、その才能が大きく伸びた。山本氏はこう続けた。
「そもそも大前提として、よく言われる『乾は天才』という部分は間違っています。確かに彼の持っていた才能は、原石として素晴らしいものがありましたが、それを彼自身がしっかりと磨けるか、磨けないかが重要で、その結果によって将来への道が大きく左右されます。乾の一番の持ち味は『学び続けられる』ことだし、30歳になった今も“サッカー小僧”そのままなんです」(山本氏)
山本氏の発言を裏付けるように、20日に放送されたバラエティ番組『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)のなかで、日本代表の大迫勇也が乾について、「ボールを蹴るのが大好き」「少年みたい」と評価していた。
乾が野洲高校で見せる「サッカー小僧」の顔
乾がプロになってから今まで、ずっと変わらないことがある。それは日本に帰国して母校に顔を出すときだ。ドイツやスペインに渡ってからも、乾はオフの時に滋賀に帰って来ると野洲高校に顔を出す。その時の格好は、決まってジャージとスパイクを着用している。練習前に後輩たちの前で話をした後に、そのまま練習に参加するのだ。