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“キムタク行政”の結果、役者陣が少々小粒?
福山のガリレオシリーズは、2007年に放送されたテレビドラマ版がヒットし、前述の『容疑者Xの献身』の続編にあたる映画『真夏の方程式』(2013年公開)も、興行収入33億円と実績を残している。やはり、「東野圭吾作品といえばガリレオの福山」というイメージが一般的には強いだろう。
「東野圭吾ファンには周知の事実ですが、キムタクが主演した映画版の原作としての『マスカレード・ホテル』には、前日譚となる第2作『マスカレード・イブ』、そして『マスカレード・ホテル』のその後を描き、主人公の刑事が再びホテルで潜入捜査をする第3作『マスカレード・ナイト』が存在します。今回、『マスカレード・ホテル』が50億円を突破すれば、フジテレビで2作目を連ドラ化しつつ3作目を映画化、というのが規定ルートでしょう。視聴率が取れず不振にあえぐフジテレビは、相当色めき立っているそうです」(前出の映画関係者)
見事シリーズ化が実現すれば、フジテレビにとっては「ガリレオシリーズに次ぐドル箱企画」を手に入れたも同然。関係者からはそれほどの大きな期待を寄せられているわけだが、一方で「確かに『マスカレード・ホテル』は上質のミステリ作品としては安心して観られますが、フジテレビならではの“粗さ”も目立つ」と水を差す人もいる。
「物語のほとんどがホテル内で進行する一幕モノという意味では、同じフジテレビ色の強い映画『THE 有頂天ホテル』(2006年公開、監督/三谷幸喜)と比べてしまいますよね。しかし、役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子らをはじめとして錚々たるメンツが一堂に会していた『THE 有頂天ホテル』に比べれば、『マスカレード・ホテル』の“布陣”はどうしても見劣りします。基本的には『HERO』を中心とした鈴木雅之組の役者が多く、制約の多いキムタクとの兼ね合いもあって、人気俳優をそこまで多くは出せないんです。興収60億円を突破した『THE 有頂天ホテル』は、三谷幸喜という天才のもとに役者たちが集いましたから、どこを切り取っても当時の人気俳優が出てきます。そこは、“キムタク行政”をうまく仕切れなかったフジテレビの限界ともいえるでしょうね」(某映画配給会社社員)
とはいえ、とにもかくにも現在は大ヒット街道を爆走中の『マスカレード・ホテル』。一方で、ガリレオシリーズの最新作小説『沈黙のパレード』が昨年10月に発売され、「福山でぜひ映像化を!」と望む声が早くも上がっている。はたしてキムタクは、福山雅治から「東野圭吾作品の“真の主人公”」という金看板を奪取することができるのか。この“代理戦争”から、しばらくは目が離せそうにない。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>