ビジネスジャーナル > 連載ニュース > ロボット、ソフトバンク参入の衝撃  > 2ページ目
NEW
広木隆「僕にも言わせろ~真説 経済のミカタ」(6月25日)

ロボット、少子高齢化対策と労働力供給向上で社会を変える?ソフトバンク参入の衝撃

文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
【この記事のキーワード】, ,

●ソフトバンク参入、その2つの意義

 日本が優れたロボットを開発する技術力を有していることは疑問の余地がない。問題は、それをビジネスとしてどう育てていくかであろう。ロボット研究の第一人者である福田敏男・名城大学教授は、「世界市場が急速に広がる中で勝ち抜くためには、人工知能(AI)などのロボットを動かす『ソフトウェア』と、どう稼ぐのかというビジネスの『構成力』が欠かせない」(「日経ヴェリタス」<日本経済新聞社>)と指摘する。

 その意味で大きな注目を集めているのが、ソフトバンクである。ソフトバンクは感情認識ヒト型ロボット「Pepper」を来年2月に発売すると発表した。注目される理由は2つある。

 ひとつは、ソフトバンクのビジネスモデルが完全にコンシューマー(消費者)目線だからだ。これまでの日本のロボット産業が、ほとんど製造業の現場をターゲットにしてきたことと対極にある。Pepperの価格は19万8000円とパソコン並みで、全国のソフトバンク・ショップで現物に触れることができる。壊れたら修理に持ち込むことができる。こうなると携帯電話ビジネスの延長だ。消費者の日常生活に溶け込ませ、手放せないものにする。それをやってきたのがソフトバンクだ。

 もうひとつの注目点が「感情認識ヒト型ロボット」だという点である。福田教授の指摘にあるように「人工知能(AI)などのロボットを動かすソフトウェア」が非常に大事である。ソフトバンクの孫正義社長は、発表会で同社のビジョンについて「愛を持ったロボット」だとぶち上げた。果たして、ロボットに「愛」を持たせることは可能なのか? 孫氏は次のように語る。

「僕なりの理論では、人々の感情を数値化することは可能なはずだ、とその時に思ったんです。人間が理解できるということは、コンピュータにも理解できる。(中略)体もロボットとして用意できる。今こそ挑戦するときだと思いました」

 孫氏が言うように、「挑戦」という言葉がふさわしい。むしろ「冒険」といったほうがいいかもしれない。体はロボットとして確かに用意できる。しかし、感情はどうか。仮に感情を持ったロボットが作れたとしよう。しかし、それはわれわれの社会にとって、そしてまたロボットたちにとっても幸せなことだろうか? 『A.I.』『アンドリューNDR114』『アイ,ロボット』『ブレードランナー』などロボットやアンドロイドを扱った映画がどれもハッピーエンドでないのは、彼らが人間の心を手に入れてしまったからである。

 だが、それは当分の間、考えなくてもいいだろう。その領域には、そうやすやすと到達することはできないと思われるからだ。冒頭のチャペックの劇では、ロボットにはなぜ人権がないのかと抗議する女性に、ロボット製作所の支配人がこう言う。

「それは魂の作り方を誰も知らないからです」
(文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト)

ロボット、少子高齢化対策と労働力供給向上で社会を変える?ソフトバンク参入の衝撃のページです。ビジネスジャーナルは、連載、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!