今、渋沢栄一にあらためて注目が集まっている。
2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公に決まり、2024年から導入が予定されている新・一万円札の顔も渋沢栄一だ。日本資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一は、どんな理念、考えを持った人物だったのか。
■今あらためて脚光を浴びる渋澤栄一の哲学
『マンガ渋沢栄一に学ぶ 一生モノのお金の超知識』(渋沢栄一原案、渋澤健監修、宝島社刊)は、渋沢栄一が、仁義・道徳の理念を見据えたうえで、事業を進める考えをまとめた1916年刊行の『論語と算盤』をわかりやすくマンガに起こしたもの。現代に蘇った渋沢栄一が、主人公である若手社員の前にお金の仕組み、考え方、生き方を教えていく。監修の渋澤健氏は、渋沢栄一の玄孫であり、コモンズ投資信託株式会社取締役会長である。
激動の幕末、明治・大正・昭和を生きた渋沢栄一は、戦争のような非常事態になっても、道理に沿った希望を持って生きていくことが必要であると主張している。今行っている事業が、将来はどんな影響を与えるのか、を考慮して進めていかなければならない。
そして、若者は決められた仕事をただ命令に従って処理しているだけではいけない、ともしている。ものごとには「趣味」を持って取り組んでほしいとも語る。
「趣味」とは、「理想」「欲望」「好むこと」「楽しむ」こと。趣味を持って仕事をする、とういうのは、与えられた仕事に対して、ワクワクした気持ちや理想を加えていくこと。思い通りにならないことも多い仕事で、自分の持っている理想や欲望の一部にかなうこともあるからだ。
そういった熱意を持って仕事をできるなら、きっとその人自身も生命あふれる魅力的な人間になることができるのだ。
また、渋沢栄一が高く評価するのが、戦国武将の豊臣秀吉の勤勉さである。それは秀吉がコツコツと勉強を重ねた結果、低い身分から這い上がったことによる。現代の若手社員も、どんな仕事でも全力を注いで、忠実に誠意を込めて目の前の仕事に取り組むべきなのだろう。
『論語と算盤』の中で、水戸光圀の「小さなることは分別せよ、大なることは驚くべからず」という言葉を引用している。小さな問題は慎重に対処して、大きな問題はビクビクせずに堂々と取りかかれ、ということだ。
『論語と算盤』は経済界のバイブルとして読まれてきたが、近年では北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督やロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が愛読し、スポーツ界や政界など、分野を超えて読まれている。
どんな職種でも、『論語と算盤』に書かれていることは役に立つということだ。本書はマンガで描かれているので読みやすく、理解もしやすい。渋沢栄一から、生き方、働き方を学んでみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。