希望の会社に入社して将来に胸躍らせている人、これから始まる社会人生活に不安を覚えている人。新入社員の思いはそれぞれあるだろう。しかし、せっかくなら仕事は楽しくやりたいもの。
人生の大半の時間を過ごす会社で楽しく働くヒントを与えてくれる一冊が『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(青木慶久著、PHP研究所刊)だ。
著者である青木氏は、サイボウズ株式会社の代表取締役社長。
同社はIT企業として成長著しく、近年では離職者を七分の一に減らすワークスタイル変革を実施。取締役自ら三度の育児休暇を取るなど、積極的に「楽しく働ける会社づくり」を行っている。
そんな著者が本書で語るのは、「なぜ会社は楽しくないのか?」「楽しく働くにはどうしたらいいか?」というテーマだ。これから新社会人生活を始める人、就活を控えている学生が知っておきたい、会社や仕事との向き合い方のコツを、本書からいくつか紹介しよう。
■「いい会社」にとって利益はカス
楽しく働くためには、そもそもその会社が「いい会社」かどうかが大きなポイントだという。その目安の一つになるのが会社の「利益」だ。
「利益」は、顧客が支払った総額である「売上」から、社員の給料や仕入先への支払い、オフィスの家賃などに分配していって残ったお金だ。会社が手っ取り早く利益を増やそうと思ったら、この分配を減らせばいい。つまり、社員の給料や下請けへの支払いなどを減らせば、利益は上がってしまうのだ。
それゆえ、楽しく働ける会社かどうかは、「利益の大きさ」よりも、「どこにどれくらい分配されているか」を見たほうがいい、と著者は述べている。
経営者の間で有名な長野県の伊那食品工業の塚越会長は「利益はカス」と言っている。売上を仕入先、パートナー、従業員、社会に還元して、絞った残りカスが利益なのだ、という意味だ。さらに塚本氏は「どちらかというと従業員の給料の方が目的で、利益はあくまでもカス。その方が少なくとも働く人には幸せですよ」と述べているという。
経営者が利益をどこに向けているかは、楽しく働けるかどうかに大きく関わってくるだけに、知っておきたいところだ。
■「会社は楽しくなくて当たり前」は本当か?
よく「職場は遊び場じゃない。楽しくなくて当たり前だ」「仕事は給料を稼ぐため、辛くてもやるものだ」と言う人がいる。しかし、考え方を変えれば一概にそうとは言い切れない。
著者は、「得ることがうれしいもの」をすべて報酬とするならば、給料以外にも報酬はあるし、楽しく働く源泉になると述べる。
例えば、気持ちよく働ける仲間、知らなかった人と会えたり人脈が広がること、会社の設備や環境自体が心地いいということもあるだろう。
特に大きい報酬となるのは「仕事でワクワクできるかどうか」だ。
会社には、「こんな製品やサービスで、こういう人を喜ばせるぞ」という理念やビジョンがある。会社が掲げる理念やビジョンの方向性と、自分がやりたいことの方向性が重なっていれば、それがモチベーションとなり、どんな仕事をしていても楽しく働けるはずだ。
お金以外の報酬に目を向けて、自分がやりたいことを細かく分析していくことは、早いうちからやっておくといいだろう。