原発労働は、雇用関係が複雑で、違法な派遣で中間搾取
することが常態化している。四次請けとなる派遣下請け以下の
労働者たちは、不法な雇用のため、社会保険には加入させられ
ず、規定の被ばく線量を超えれば使い捨てとなる場合が多い。
なお東京電力は、事故前は三次下請けまで、事故後は四次請け
まで認めている。出典:渡辺博之氏
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福島原発の事故により東京電力の経営実態が明るみになってきたが、依然として原発事故処理の実態が大手メディアで報じられることはない。原発の経営と同様に、原発事故処理は、電力会社と裏社会だけが行っているのではなく、そこに地元の有力者や政治家など多くの利権がからみ、進んでいるのである。ここでは、そうした事故処理の実態を紐解いていく。
原発をめぐる腐敗の構造や現地作業員の窮状は断片的に漏れ伝わってくるようになったが、依然としてテレビや新聞では大きく取り上げようとしない。
そんな中、共産党のいわき市議、渡辺博之氏は、「その背景にはやはり、電力会社、関連会社、政治家・地元有力者による利益共同体=原子力ムラの存在がある」と語気を強める。原子力ムラは現在に至っても、その恩恵を享受し続けようとしているのだ。
渡辺氏によれば、福島原発の収束作業においては二次派遣、三次派遣という違法労働が横行しており、その日当はおよそ6000円~1万2000円。ある下請け会社社長は「東電が計上している作業員の日当は、ひとり当たり10万円ほどだと聞いている」と語っており、これが事実なら、末端労働者は最大9割以上の中間搾取を受けていることになる。
「福島第一原発は、まさに戦場です。作業員は被ばくしても補償を受けられず、恐怖と緊張で30代にして髪が真っ白になってしまった人もいる。協力会社からは年配の作業員が使い捨てのように送り込まれ、派遣作業員は下請け構造の中で搾取される。さらにはヤミ金の借金が膨れ上がり、暴力団に原発作業を強要されるケースもあります。派遣元は作業員を社会保険に加入させないことも多く、人を人と思わない扱いが常態化している」(渡辺氏)
原発作業員をめぐる中間搾取の構造が、事故以前から続いていることは、すでに多くの人が知るところであろう。しかし、原発の派遣労働というと、暴力団絡みのフロント企業が暗躍しているかのような話も多く報じられているが、実は地元の一般企業がサイドビジネスとして、危険を承知で働かざるを得ない生活困窮者を違法に派遣してきた。