6月28日、取次大手・トーハンが、同社株主総会で野間省伸・講談社社長本人の承諾を得ずに、野間氏を社外監査役に選任した。しかも野間氏サイドでは、「2週間ほど前に、任期満了での退任を届け出ており、再任を承諾した事実はない」と反発しているというのだ。
その後、トーハンでは株主総会の招集通知をホームページ上で修正し、野間氏の監査役就任に関して「野間氏からは、就任の承諾を得ておりません」との文言を追加している。さらに、同社では「数日のうちに(野間氏から承諾を得て)なんらかの発表ができる」としていたが、7月10日現在、承諾を得られていないのであろう、新たな発表は何もない。
崩壊したトーハンと講談社の蜜月
と、ここまでの事実関係は、7月1日付日経新聞朝刊でも報じられていることだが、講談社は、トーハンの発行済株式の5.27%を占める同社の筆頭株主。戦後のトーハン創立以来、両者は蜜月関係を築いてきた。それがなぜ、こうしたお粗末な事態を招くことになったのか? 根回しの風土が浸透している日本では、通常起こりえない事態である。
トーハン創設以来の大株主である、ある大手出版社幹部は、
「野間さんならずとも、トーハンのここ数年の動きは、われわれから見ても実に不可解極まりないものだった。野間さん同様に同社監査役を務める、小学館の相賀(昌宏・社長)さんは大人だから、表立った行動はとらなかったが、野間さんは若いから、そうしたことに我慢ならなかったのではないか」
と推測する。
トーハンは、1991年6月に社長に就任した上滝博正氏が会長を退き、取締役相談役となってもなお実権を握り、その後、3人の社長をコントロールしてきたとされる。ある中堅出版社のトップは、
「トーハンさんに年賀の挨拶に行くと、真ん中にドンといるのは相談役である上滝さんで、会長の山崎(厚男)さん、社長の近藤(敏貴)さんは、その横で殿様にお仕えする家老の趣だった」
といい、トーハン経営陣のアンバランスな力関係がうかがえる。
“老害”相談役の暴走
そしてこの82歳の上滝氏が、株主総会を1カ月ほど先に控えた5月半ば、突如、異様な行動に出る。