そこから見えるのは、弁護士が独立性を失い、弁護士ではない非弁業者主導の下、依頼人の利益が損なわれる悪しき商業主義だ。では、そうした非弁提携事務所に勤めている弁護士とは、どういう人種なのか。松永弁護士が言う。
「非弁提携の噂が流れている、ある有名法律事務所が、訴訟の準備書面をホームページ上で公開しているのですが、基本的に法律の勉強をやっていればわかるような間違いがあり、これを試験で書けば確実に落ちるというレベルの低いものです。要は、普通の弁護士であればわかることが、わかっていないのです。依頼人の強い要望で、負けるとわかっている訴訟をすることは確かにあります。しかし、そのような準備書面をホームページに掲載することはありえません。彼らのやっていることは、広告を大量出稿して、できるだけ依頼人を集め、楽な事件だけを受任し、早く解決して目先の手数料を取る、というものなのです。
こうしたやり方は、弁護士ではなく整理屋が主体になっているからそうなるわけです。また、そうした事務所に勤務している弁護士のレベルも低い。多くの弁護士が参加しているメーリングリストで、あるとき、非弁提携を疑われている事務所に所属している弁護士が質問をしていたのですが、『この人、本気で言っているのかな』という内容でした。司法試験に受かっていれば、当然知っているべき知識がないことに、驚かされました。
昔は、弁護士が非弁提携に走るのは、経済的な理由からだとされてきました。事務所が赤字になってしまって、仕方がなく整理屋と提携し、仕事を斡旋してもらうというケースが多かったのです。
しかし、私が調べた限り、非弁提携をしているとされる弁護士に共通するのは、弁護士として持っていなければならない能力の欠如です。学歴も良く、振り出しは大手の四大法律事務所でしたが、現在は非弁提携をしていると噂されている弁護士がいますが、そういった弁護士の実情を調べてみると、事件はほったらかしで何もできないケースが多いのです。
さらに、こんな不可解な弁護士もいます。自宅は埼玉の中心都市なのに、事務所は千葉市の駅前にある。本当に片道2時間以上もかけて事務所に通っているのか疑問に思います」
われわれが依頼人となって、弁護士を探すとなった場合、問題弁護士には当たりたくはないものだ。では、どうしたら、通常の法律事務所と非弁提携事務所を見分けることができるだろうか。
「表から見分けるのは、ほぼ不可能でしょう。行ってみないとわかりません。私の場合は、少なくとも20分から1時間は依頼人から直接話を聞き、説明をしますが、非弁提携事務所では、弁護士が出てこなかったり、弁護士が出てきても、名刺だけ渡して、世間話をする程度で、基本的には1分程度、長くてもせいぜい5分ほどで話は終わります。弁護士がほとんど話さなければ、事件を依頼しないで帰ったほうがいいでしょう。また、弁護士に質問をしたのに、弁護士は何も答えず、横にいる事務員らしき人物が答えるような事務所は危険です」(同)