果たして背景には何があるのか?
高利益を叩き出しても「田舎企業」と揶揄されてきたロームは、世界企業へと変身できるのか?
ニッチ分野に勝機を見いだし、一時期は「隠れた優良企業」
ロームと聞いても、何を手がけている会社かイメージが浮かばない人も少なくないだろう。
創業は1954年。佐藤研一郎氏が、京都市で抵抗器を販売する会社を立ち上げたのが始まりだ。転換期となったのが67年。トランジスタやダイオードなど半導体事業に進出。80年代には、パソコンの記憶媒体に使うDRAM全盛時にも汎用品には一切興味を示さず、大手顧客からのニッチな特注品に注力、高収益な企業体を築き上げたのだ。
00年代初頭以降、利益率は20%前後と一時の勢いは失われたものの「隠れた優良企業」の座を確保してきた。しかし、近年は急速に息切れ感が見え始めている。11年3月期の営業利益率は9.6%、12年3月期も2.1%と低迷。当期利益は、創業以来初の赤字を記録した。売上高も一時の4000億円台から落ち、3000億円台前半での低空飛行が続く。
出遅れた世界戦略、売上高の7割が国内顧客向け
アナリストの見方も厳しい。外資系アナリストのひとりは「ビジネスモデル自体が終焉を迎えようとしている」と指摘する。割高な特注品にこだわってきた国内メーカーも、08年秋のリーマンショック後、業績の悪化で製造コストの見直しに乗り出さざるを得なくなった。結果、各社が標準品の採用を増やしたことで、ロームの得意分野とする特注品の割合は減少している。
加えて、ロームの顧客のうち、日本の大手企業の割合が多いのがアダとなっている。米アップルのiPhone向けに部品を供給するなど、成長領域に食い込んでいるものの、全体の7割程度が依然国内顧客向け。日本メーカーの世界における存在感低下で、ローム自身も伸び悩むのは必然だ。
創業者の引退も尾を引く。
創業以来、約50年トップに君臨してきた佐藤氏が、10年3月末に退任。「独裁」との声もあったが、佐藤氏が強烈なリーダーシップを発揮することで、今のロームを築き上げたことは自他共に認めるところ。「佐藤氏は人の好き嫌いも激しかったが、信賞必罰を徹底していた。かわいがっていた役員でも、どんどん辞めさせてきた」(同社関係者)
パワー半導体で起死回生を狙うが……
ビジネスモデルが転換点を迎えそうな上、海外顧客の開拓が急務となる厳しい状況が続くが、もちろん手をこまねいているわけではない。省電力効果が高いパワー半導体で一発逆転を虎視眈々と狙っているのだ。