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一度は断ったトヨタはじめ、出資候補企業に漂う無関心ムード

トヨタ、パナも嫌々? ルネサスの官民共同救済案に黄色信号

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トヨタ、パナも嫌々? ルネサスの官民共同救済案に黄色信号の画像1ルネサスの官民共同買収案について報じる
9月22日付日経新聞。
 経営再建中のルネサスエレクトロニクスに対して、官民投資ファンドの産業革新機構(INCJ。以下、機構)が、トヨタ自動車やパナソニックなどの国内企業と共同出資案を検討していることが明らかになったが、早くもその先行きを不安視する声が浮上している。

 ルネサスに対しては米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が1000億円の出資案をすでに提案している。外資への技術流出を恐れ、「オールジャパン」で阻止に動き出したかたちだが、体制が一枚岩ではないことや関係企業の無関心さも目立っている。本当に実現するかどうかも含め、一筋縄ではいきそうにない。

 機構はトヨタ、パナソニックのほか、日産、キヤノンなど国内の大手製造業に出資を打診しており、来月にもルネサス側に提案する方向で関係者間の調整に入っている。機構が株式の半数を握り、経営権を取得する方針という。

自動車用マイコンの国内シェアは9割

 ルネサスは、マイコンと呼ばれる電子機器や自動車の制御に使う半導体の世界首位。世界市場でのシェアは約3割、自動車用は5割近い。国内自動車メーカーは使用するマイコンのほとんどをルネサスから調達しており、国内の車用に限ればシェアは9割ともいわれる。ルネサスが東日本大震災で主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災して操業が止まったことで、自動車各社の生産が急減したことは記憶に新しいはずだ。

「重要部品を製造するルネサスの経営が傾いており、オールジャパンで救済する」

 機構の計画する枠組みに、こうしたイメージを抱く人もいるかもしれない。だが内情は大きく異なる。今回の機構の動きに至るまでのルネサスの動向を振り返ると、すでに、春先からルネサスの経営危機説は市場でくすぶっていた。震災の影響もあったが、デジタル家電向けの半導体が不振で、国内に10拠点以上抱える工場の固定費が、ジワジワとのしかかって経営体力を奪っていった。

そもそものネックはエルピーダメモリだった

 製造業の肝となる部品を製造するだけに、経済産業省もルネサスの動向を注視していたが、動くに動けない事情もあった。かつて国費を投じたエルピーダメモリが、2月末に経営破綻に追い込まれたからだ。経産省関係者はこうささやく。

「汎用品で付加価値が低いDRAMを手がけるエルピーダとマイコンを手がけるルネサスでは、破綻の持つ意味合いが大きく異なる。ただ、エルピーダが破綻した以上、状況的に国や機構が半導体産業に手を差し伸べられる状況ではなかった」

 ルネサスをめぐってはパナソニックや富士通との再編も機構が軸になり進めていたが、エルピーダ破綻で交渉は一時中断に追い込まれた。

大株主に拒否され、支援の中心はトヨタへ?

 経産省は積極的な動きを表向きには見せなかったが、水面下では支援企業探しに奔走した。ルネサスの大株主である日立製作所、三菱電機、NECの3社に出資をまず打診したが、10年4月のルネサス発足前後に「手切れ金」として2000億円規模の出資をしていた3社はこれを拒否。打つ手がなくなった経産省がルネサス支援を打診したのが、今回の枠組みにも名を連ねるトヨタ自動車だった。

 マイコンは自動車の中核部品。今後、電気自動車など電子化の進行で半導体の存在感は増す。経産省はトヨタにとっても検討の余地はあるのではと考えたが「あっさり断られた」(同)という。「マイコンが重要とはいえ、上場企業である以上、赤字企業への出資など到底できない」(トヨタ関係者)と判断されたわけだ。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

※後編へ続く

BusinessJournal編集部

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