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IGPIパートナー塩野誠「The Critical Success Factors Vol.5」

これだけ読めばわかる!大統領オバマの“生まれ方”

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『大統領オバマは、こうしてつくられた』
(朝日新聞出版/ジョン・ハイルマン)
 ゴールドマン・サックス、ベイン&カンパニーなどの複数の外資系金融機関やコンサルティング会社を経て、ライブドア時代にはあのニッポン放送買収を担当し、ライブドア証券副社長に就任。現在は、経営共創基盤(IGPI)でパートナー/マネージングディレクターとして企業の事業開発、危機管理、M&Aアドバイザリーに従事するのが、塩野誠氏である。そんな塩野氏が、ビジネスのインフォメーション(情報)をインサイト(洞察)に変えるプロの視点を提供する。

 11月6日、米国大統領選挙では、今回もハロウインの仮装マスクのジンクスは破られず、マスクの売上で勝った候補者であるバラク・オバマ氏が再選という結果となりました。非常に接戦となった今回の選挙、個人的には私も在籍していたコンサルティング会社であるベイン&カンパニー出身のミット・ロムニー氏が、どこまで戦えるのかが気になっていました。

 ベインはマッキンゼーやボストンコンサルティンググループ(BCG)等を競合とする米国の戦略系コンサルティング会社です。ベインのOB・OGにはeBayを経てヒューレット・パッカードのトップを務めるメグ・ホイットマン氏や、アップルの日本代表を務めた前刀(さきとう)禎明氏などがいます。

 ロムニー氏は1984年に30代の若さで投資ファンド会社(プライベート・エクイティ・ファームと呼ばれます)のベインキャピタルを設立し、そこで辣腕を振るい、大富豪となっています。開示資料によれば、ロムニー氏の個人資産は200億円超となっています。ロムニー氏は政界に進出した後、03年に入ってからはマサチューセッツ州知事として財政赤字削減に取り組み、実績を残しました。

 オバマ氏もロムニー氏もハーバード大学ロースクール出身ですが、ロムニー氏はJD・MBAと呼ばれる、ロースクールとMBAを同時に卒業するという課程に在籍していました。JD・MBAは米国では他の大学にも存在する一般的な課程です。

 余談ですが、私は東大のような日本のトップ大学もJD・MBAを設置すればよいと思っています。我が国では法律とビジネスの両方に長けた官僚やビジネスパーソンはまだ少ないので、JD・MBAで学んだビジネスセンスのある法律職の官僚や、法務センスのあるビジネスパーソンが増えたらよいと思っています。優秀な学生にとっては、法もビジネスも論理的思考力を発揮する場としては同様ですし、極めて地域依存の高い法律と、ますますグローバル化するビジネスの基本を同時に学ぶことは思考の鍛錬には適しており、「法と経済」や「立法とインセンティブ設計」といった領域に早い段階で関心を持てるかと思います。ちなみにロムニー氏はJD・MBAを超優等で卒業しています。

 話を大統領選に戻します。極めてウォール街的な投資家に見えたロムニー氏は、近年の反格差運動である「ウォール街を占拠せよ」の人々からすれば、典型的な批判対象でした。そんな人間が大統領になったら、企業再生経験者という意味では、それはそれで興味深かったとは思いますが、今回は実現しませんでした。「ウォール街を占拠せよ」のデモへの参加者は旧来のオバマ氏支持者が多いとされていましたが、ごく一般的な米国人からすればハーバード大学ロースクールを卒業したロムニー氏もオバマ氏も、「エリート臭い」という意味では近いものだったともいえます。

 私は前回の08年大統領選挙の際に、米国の大学関係者から大統領選について聞く機会がありましたが、当時は大学教員のようなインテリ層にとって、オバマ氏を支持することは政治的に正しい雰囲気があったように記憶しています。大学人やインテリ層としては、さまざまなイデオロギーが存在する中でも、米国初のアフリカ系大統領になるかもしれない候補を支持するのは心地よいという雰囲気がありました。

●「大きな政府」対「小さな政府」

 その後、大統領となったオバマ氏は、グリーンニューディール(7,870億ドルを拠出)や医療保険改革という、良く言えば強力なリーダーシップ、連邦政府の介入を嫌悪する層からすれば「大きな政府」志向の政策を実行していきました。ビジネス側の話としては、グリーンニューディールの中でクリーンテクノロジー系ベンチャーは次々と現れましたが、資本市場から見て成功モデルと呼べるまでに至ったものはありませんでした。