(「デジタルガレージHP」より)
公職選挙法が施行された1950年当時は、インターネットは存在しなかった。今日、インターネットやツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアが広く社会に浸透しているにもかかわらず、法律がそれらを想定していないため選挙活動で活用することが禁止されているのだ。
だから、こんな変なことが起こる。12年12月16日に投開票が行われた衆院選で、北海道1区で新党大地から立候補し、落選した五輪スピードスケートのメダリスト・清水宏保氏が投票翌日にブログを更新した。そこで、支持者に対して選挙に関するお礼や落選のおわびを掲載したところ公選法に抵触すると指摘されて、削除に追い込まれた。
立候補者の自筆の手紙などを除き、選挙後に「文書図画」を頒布して当落のあいさつをすることを公選法は禁じている。ネットにお礼の書き込みをすることはご法度なのだ。
ネットを積極的に活用した選挙が繰り広げられている先進国に比べて、日本の実情は隔世の感がある。候補者からは「日本は先進国とはいえない」との不満の声があがる。今回の衆院選では自民、民主、みんなの党などが公約にネット選挙の解禁を掲げた。
鳩山由紀夫首相時代の10年5月、与野党がインターネットを利用した選挙運動を夏の参院選から解禁することで合意した。公職選挙法改正案を国会で成立させる手はずだったが鳩山首相の普天間移転に関する問題発言で国会は空転、成立しなかった。
ネット選挙がどんな内容になるかは10年の改正案が叩き台になる。政党と候補者本人に選挙期間中のホームページやブログの更新を認める一方、電子メールは禁止。ツイッターは利用を自粛とするというものだった。
この2~3年、コミュニケーション・ツールの進化は凄まじいものがある。パソコンを使ったホームページやブログは後方に退き、ケイタイ経由のツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアが前面に出てきた。ブログなどの更新のほかに、立候補者がツイッターでつぶやくことやフェイスブックに投稿する、一連の選挙運動のガイドラインの策定が必要で、国会で議論されることになる。
衆院選の公示前、野田佳彦首相(当時)を名乗る人物がツイッター上で「早くこの職辞めて~」などとつぶやき、野田首相の事務所が、偽者による行為と指摘する騒動があった。ネット選挙が解禁されれば、こうしたなりすましは必ず起きる。逆に、落選させるために、批判的な書き込みを集中させて、ブログを炎上させることも当然ありうる。
夏の参院選に間に合わせるためには春先までに公選法改正案を成立させる必要がある。3月までが勝負だ。だが、議論が堂々めぐりして、決められない政治に逆戻りなんてことも。成立が遅れればネット選挙の解禁が先送りされることも十分にあり得る。
ネット選挙の解禁が報じられるや、東京株式市場ではネット選挙関連銘柄が注目を集めた。ツイッターやフェイスブックなどの利用が見込まれ、オンライン広告の増加も期待されるからだ。