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激化する通貨安戦争、日本参戦で世界中から非難?現実味帯びる金本位制復活

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2月15〜16日のG20共同声明原案
について報じる2月14日付朝日新聞より
 基軸通貨米ドルの下落は、いまや「世界の通貨安戦争」の様相を呈し始めている。

 1月26日、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席した甘利明経済再生担当相は、針のむしろに座らされたような心持ちだったろう。ドイツのメルケル首相は、安倍政権が日本銀行に2%のインフレターゲットを含む大胆な金融緩和をのませたことに対し、「為替操作」として「日本に対する懸念が出ている。政治が中央銀行に圧力をかけるべきではない」と批判した。甘利氏は「2%の物価上昇率目標は世界標準」と理解を求めたが、キング英中銀総裁や韓国政府からも通貨安競争への懸念が示され、日本は四面楚歌の状態。唯一、助けの手を差し伸べたのは、カナダ銀行のカーニー総裁だけだった。カナダドルと日本円は、自国通貨高に苦しむ「似た者同士」のようなものだ。

「通貨戦争は最大の危機と言っていい」ヘッジファンドの重鎮、ジョージ・ソロス氏は、世界的に進む通貨安競争を「危機」と表現した。1930年代、世界恐慌で疲弊した各国は、関税引き下げとブロック経済化を推し進めた。だが、その先に待っていたのは第二次世界大戦という悲惨な結末。現在の「通貨安競争」は、この「関税引き下げ競争」が形を変えたようなものとの指摘だ。

 その通貨戦争に、ついに日本が参戦した。日本銀行は2%のインフレターゲット導入を決め、期間無制限の金融緩和に踏み込む。「かたくななまでに政治介入を阻んできた日銀が、安倍政権の前に落城したことは驚き」と市場関係者は語る。「正副総裁人事を人質にとられ、譲歩に譲歩を重ねたようなもの」(先の市場関係者)と受け止められている。

●注目を集める金

 こうした世界的な「通貨安戦争」から、再び注目され始めているのが「金」であり、「金本位制」への復帰である。

 2月に入り、ドイツ連邦銀行(中央銀行)は、パリとニューヨークの保管庫にある金674トンを2020年までに本国に移す方針を表明した。ドイツ連銀の文書によると、「この新たな保管計画で、ドイツ連銀は金準備の2つの主要な機能に重点を置いている。それは、国内での信頼と自信の構築、そして国外の金取引拠点で短期間のうちに金を外貨と交換する能力だ」と説明している。ドイツの金準備に対する国民の信頼回復に狙いがあるというわけだ。

 世界的な「通貨安戦争」により、各国の通貨に対する国民の信頼が揺らいでいる。その信頼を担保するのは、やはり金にほかならない。

 昨年秋の米大統領選挙において、共和党は金本位制への復帰を公約に掲げた。それは基軸通貨米ドルへの信頼の揺らぎを反映している。

 金市場の動向については、2003年から「金ETF(上場投資信託)」がスタート。金の現物のみならず、金融商品としても売買されるようになった。これに伴い金は、個人投資家の小口資金の受け皿となっており、流動性が高く、手数料が安いことで価格も急騰した。また、年金基金が「金ETF」を代替投資商品としてポートフォリオに組み入れる動きも活発化している。

 一方、インド、中国を中心にした新興国では金装飾品需要が根強く、この面からも金価格が上昇しやすい地合いが続いている。

 そして、極めつきは各国政府による外貨準備の多様化の一環としての金保有である。ドル基軸通貨から「多極的な通貨バスケット」への思惑が働いている。フランス、ドイツは外貨準備の6~7割を金で保有していると言われる。

 ニクソンショック(1971年8月15日)から40年、金本位制への復帰を示唆する動きは米国をはじめ、先進国で共通して見られる。元FRB議長のグリーンスパン氏は論文で金本位を提唱したほどだ。

 世界的な「通貨安戦争」の末路は、再び「金本位制」への復帰となる可能性も皆無ではない。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)

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