(「Wikipedia」より)
安倍政権の「機動的な財政政策」により実施される政策の中核は「公共事業」だ。東日本大震災の経験を踏まえ、防災対策を中心とした「国土強靭化計画」が打ち出されている。もっとも、2012年12月2日に中央自動車道の笹子トンネル天井板の崩落事故もあり、公共事業の中身を老朽化したインフラの補修・整備を中心としたことには、一定の評価ができよう。
公共事業は仕事のない地方に仕事を生み、その仕事に就くことで所得税を支払い、年金の掛け金を支払い、消費税を支払う。ある意味では、究極の生活保護対策でもある。しかし、公共事業の乗数効果(景気を押し上げる効果)は、主要なインフラ整備の一巡などにより、高度成長期の2倍超(公共事業に投資した金額の2倍以上の景気押し上げ効果)と比較した場合、近年では大幅に低下し、1倍程度となっている。その点でも、公共事業により景気の押し上げを図ろうとすれば、恒常的に財政支出による公共事業を継続していかなければならなくなる。
その財政は、危機的状態にあることは周知の事実だろう。11年末の中央・地方の政府が抱える国債などの負債総額は1094兆円でGDP(国内総生産)の2.3倍に達している。事実上の経済破綻に陥ったギリシャですら約1.7倍でしかない。国民一人当たり854万円の借金を背負っている。“オギャ~と生まれた赤ん坊”も854万円の借金を背負っているのだ。
今の国家財政を一般家庭に例えるなら、年収が500万円程度の家庭が年間400万円以上の借金をしながら、年間900万円の生活を営んでいることになる。それも、年収は年々減少する一方で、年間400万円の借金のうち“借金返済のための借金”が年々増加しているため、借金の額が増え続けている状態。まさに、サラ金業者が言うところの「自転車操業→自己破産の道」なのだ。
何故こんな状態にありながら、これまで長期国債(以下、国債)を増発することができたのか。政府の国債の利払いは、84年のGDP比2%から07年の0.5%へと低下を続けた。これは、高い金利で発行した国債が償還を迎えた時に金利が低下していたため、低金利での国債発行が可能となっていたのだ。金利の低下が国債の利払い負担を軽減し、より多くの国債を発行することを可能としてきた。
しかし、98年以降、国債の金利が1~2%で下げ止まると、これまで高金利で発行した国債の償還が一巡したことで、今後は金利の低下による国債の利払い負担の軽減が望めなくなってしまった。
国債を発行する財務省の長期金利の想定は、12年度予算策定時点では2%程度だった。だが、安倍首相の「アベノミクス」によりインフレ(物価上昇)が進めば、物価の上昇は固定金利での運用を不利にするため、国債の価格を下落させ、金利を押し上げる。今後の金利上昇幅は財務省の想定を大きく上回る可能性がある。たとえ、今後の金利上昇が緩やかなものにとどまったとしても、国債の利払い費は急激に増加していくことになる。
財政の健全化では、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化が打ち出される。プライマリーバランスは、簡単に言えば国債発行による収入と国債償還のための資金や利払い金を除いた収支に当たる。つまり、税収などの国債に頼らない収入と支出のバランスを黒字にすることで、その黒字部分で国債という借金の返済を行おうというもの。
プライマリーバランスを黒字化するためには、景気回復による税収の増加が必要になる。しかし、日本の財政問題は経済成長のみで解決できるレベルを超えている。景気が回復すれば金利が上昇し、国債の利払い費が増加し、その利払いのために国債を発行するという悪循環が待っている。