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東日本大震災以降、消費者の意識が変化?

大手百貨店各社、業績底打ちで復調の実態…相次ぐ大改装、高額品販売好調のワケ

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建て替え閉店前の総決算。(「Wikipedia」より)
 銀座最古の百貨店・松坂屋銀座店は、4月3日から建て替え前の全館閉店売り尽くしセールを始めた。バブル時代を彷彿させるような高額品揃い。3階の特設会場では総重量1トン、総額120億円の金が展示・販売されている。目玉は純金箔1万5000枚を使った「黄金の茶室」。特別価格4億円だ。平成の御大尽に、豊臣秀吉の気分を味わってもらおうという趣向だ。

 松坂屋銀座店は6月末で営業を終了。2016年完成の予定で地上12階、地下6階の商業施設や多目的ホール、オフィスを併設する銀座地区最大の複合ビルになる。百貨店から都市型ショッピングモールに転換する。

 百貨店各社は08年秋のリーマン・ショック以降、先送りしてきたリニューアル(改装)に踏み切った。三越伊勢丹ホールディングス(HD)傘下の旗艦店、伊勢丹新宿本店は3月6日に全面改装して新規オープンした。営業利益の約8割を生み出す同店につぎ込んだ改装費は90億円。

 改装のコンセプトは「世界最高のファッションミュージアム」。ファッションをアートとしてとらえ、美術館にいるように感じられる陳列やゾーニング(商品の分類)へと刷新した。天井などの内装は超豪華と話題になった。三越伊勢丹は富裕層を狙った高級化路線で百貨店の王道を歩む。

 高島屋も30年度の日本橋地区の再開発に合わせ、150億円を投じて東京店の新館をオフィスなども入居する複合ビルに建て替える。商業スペースは現在の5万平方メートルから6万2000平方メートルに増床する予定だ。

 J.フロントリテイリングは傘下の松坂屋銀座店を全面建て替えるほか、12年10月、大丸東京店の店舗面積を1.4倍の4万6000平方メートルに増床して改装・開業した。

 なぜ、大手百貨店は改装なのか。理由ははっきりしている。地方店の浮上策を見いだせないため、都心の旗艦店で稼ぐしかないからだ。

 12年(暦年)の全国百貨店売上高は、6兆1453億円(日本百貨店協会調べ)。16年連続前年実績割れという低迷期から底を打った。13年2月の全国百貨店売上高は既存店ベースで前年同月比0.3%増となり、2カ月連続で前年実績を上回った。地方は依然マイナスだが、東京、大阪、名古屋の3大都市が回復した。

 2月の東京地区の百貨店売上高は1082億円。既存店ベースでは同2.5%増となり、2カ月連続で前年を上回った。高額商品が好調で業績を牽引した。商品別では海外の高級ブランドのバッグなどを含む身のまわり品が同14.2%増。100万円前後の高級時計などを中心に美術・宝飾・貴金属も同10.9%増だった。

 東日本大震災以降、「高くても品質の良いものを長く使いたい」との消費志向が強まり、高額品の販売は堅調に推移してきたが、ここにきて一気に2ケタの増収となった。

 日本百貨店協会の井出陽一郎専務理事は記者会見で「昨年末以降の株価上昇による富裕層の資産効果や、景気回復への期待感から、消費マインドが改善してきた」と述べている。

 資産効果とは、株式や土地など保有している資産の値上がりによって消費が刺激されることをいう。もう一つの大きな要因は駆け込み需要であろう。円安に急速に振れたため、海外ブランドのハンドバッグや宝飾品の値上げが相次いでいる。来年には消費税が増税になる。ブランド品は単価が高いこともあって、値上げや消費増税に消費者は敏感だ。ブランド品が値上がりする前に、消費税が上がる前に買っておこうという消費者心理が働いている。

 円安・株高の資産効果と駆け込み需要の“合わせ技”で、高額商品が売れ始めた。百貨店はアベノミクス効果で潤っているようにみえるが、美術・宝石・貴金属といった高級品の売り上げは東京地区の百貨店でも全体の5.6%にすぎない。