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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第7回

強制わいせつ事件で、東京地裁裁判官が被害者女性を“脅迫”疑惑?

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東京地方裁判所(「Wikipedia」より)
「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『さんまのホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、あらゆる企業の裏の裏まで知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない、「あの企業の裏側」を暴く!

 株式会社野村総合研究所(以下、野村総研)の幹部が取引先の女性営業担当者に強制わいせつ行為を働いたとされる、いわゆる「野村総研強制わいせつ事件」。野村総研がわいせつ行為の被害者に対して起こしていた民事裁判は、野村総研が無条件で訴えの全部を取り下げ、実質上の野村総研全面敗訴となった。

 本件について報じた記事はこちらだが、ツイート数は2,000を超え、フェイスブックの「いいね!」も1,500件近くに達した。大手新聞記事でもせいぜい20ツイートぐらいであることを考えると、その100倍近い爆発的な反響だ。筆者も本件について都内の弁護士に複数取材したところ、すでに法曹関係者の間においても本裁判は知られており、少なくとも取材した弁護士全員が同記事を読み、本訴訟概要を知っていた(事件詳細はこちらをご参照ください

 このように、自分たちに都合が悪い主張をする者を黙らせる目的で行う裁判を「恫喝訴訟」という。「一般市民が、大企業から恫喝的に訴えられる可能性がある」と考えるだけでも恐怖である。

 報道の反響を受けて、この裁判において野村総研への協力を行っているセブン&アイ・ホールディングス、野村証券の親会社にあたる野村ホールディングスにも、野村総研の犯罪的な行為も含めて、なんらかの防止策を講じたのかについて確認するため、取材を申し込んだが、いずれも防止策を講じたと主張すらもしていない。

 私たちが普段、何げなくセブン&アイ・ホールディングスが経営するセブン-イレブンやイトーヨーカドーで買い物をしたり、野村証券で取引をしたりすることで、このような恫喝訴訟を行う資金を供給してしまっているとすれば、恐ろしいことである。

 さらに本事件では、恫喝訴訟をする側が利用しようと目論む「裁判所と司法が抱える社会問題」も浮き彫りになっているのだ。

「司法制度改革」が叫ばれてから、早くも15年がたった。これまで日本の司法は、「裁判期間が長い」「弁護士費用が高い」「裁判所の判決が行政寄り」などと言われ、国民への十分な司法サービスを提供するために、裁判の効率化や法曹界の人員拡充などを目的とした司法制度改革が行われている。裁判員制度の導入や、司法試験制度改革、法科大学院整備などもその一環だ。

 確かに弁護士数は増えたが、そもそも弁護士費用や裁判費用が高いままであるため、一般市民にとって司法はまだまだ遠い世界というイメージしかない。一般的な裁判には印紙代を含めた訴訟経費として最低でも10万円程度は必ずかかるし、さらに弁護士費用として低く見積もっても10~30万円程度の費用がかかり、後払いもクレジット払いもできない。裁判を起こしたくても、お金が払えないから断念するというパターンも多いのだ。

「都心でマンションの供給が増えて、金利も下がった」からといってマンション購入が増えるかというとそうではなく、やはり「相応の所得がある」とか「使いやすいローンがある」という条件が揃わないといけない。それと同じ問題だ。

 ちなみに、「法テラス」が実施している「法律扶助」という弁護士費用の貸付制度があるが、あくまで貸付なので後日返済しなくてはならない上、所得制限があるため平均的な所得層は対象外。しかも法人は利用できない。

●大量の民事裁判を抱える裁判所

 少し話がそれてしまったが、問題は裁判所の現場にもある。

 実は裁判官にも「評価制度」があり、ホームページでも詳細に説明されているのだが、実質的には裁判官の人事評価では「裁判をこなした数」の評価が大半を占めるため、一部の裁判官には被害者を脅迫してでも「和解」もしくは「取り下げ」をさせて、裁判を終わらせようとする実態があり、それが社会問題化してきている。

 過去に本サイトの姉妹サイト「日刊サイゾー」でも概要が報じられたが(『グルになって原告をだます!? 弁護士と裁判官の“不適切な”関係』)、弁護士が増えすぎた現在、弁護士たちが収入を増やすためになんでもかんでも民事裁判に持ち込んでしまうことで、裁判の数が膨大になっており、もはや裁判所もさばききれない状態になっているのだ。実はこの実態が、恫喝訴訟が起こる背景に存在している。

 例えば東京地裁では、裁判官一人が担当して結論の判決や和解を出さなければいけない民事事件の数は、月間で約40件。しかも公判は週に2~3日程度しか開かれないため、月に10日程度しかない。つまり1日の公判で約4件の民事裁判を「解決」しなければいけないのだ。