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野村HD、損失隠し加担の疑いで伊検察が捜査へ 利益没収、損害賠償請求も

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野村證券本社(「Wikipedia」より
/撮影:Kakidai)
 アベノミクスの円安・株高で息を吹き返した大手証券各社。なかでもリーマン・ブラザーズの欧州・アジア・中東部門を買収したものの、収益の悪化に苦しんできた野村ホールディングス(HD)の復調は際立っている。だが、ここにきて同社に思わぬ負の遺産が浮上し、業績に暗雲が立ちこめかねない事態に直面している。

 イタリアのモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(モンテパスキ銀行)の損失隠しに関する調査で、シエナ検察当局は16日、モンテパスキ銀行が野村に差し入れた担保など18億ユーロ(約2300億円)相当を差し押さえると発表したのだ。シエナの検察当局の発表によると、検察は野村の元欧州責任者サディック・サイード氏と野村の債券セールス担当マネジングディレクターのラファエル・リッチ氏も虚偽の供述の疑いなどで捜査している。この発表を受け17日、野村の株価は過去3カ月で最大の下落率を記録した。

 この事件が個人の犯罪なのか、組織的な関与があるのか、これから大きな事件に発展するのかは定かではないが、16日、この発表に対し野村は次のようにコメントしている。

「モンテパスキ銀行が当社に差し入れている証拠金を差し押さえる意向があると、イタリア地方検察局が公表している事実を認識している。これまで当社の資産に対する差し押さえは行われておりません。本件に関するあらゆる不当な主張に対しては、我々は強く正当性を主張してまいります」

 一方、シエナ検察は「野村が(モンテパスキ銀行の)元幹部と共謀してデリバティブ(金融派生商品)を設計するなどし、計5億5700万ユーロ(約712億円)の損失隠しに利用された」と主張している。

 イタリア中部トスカーナ州に本店のあるモンテパスキ銀行は1472年創業の「世界最古の銀行」だが、地元大手銀行のアントンべネタ銀行の買収負担や、イタリアの経済危機の影響で大量に保有していた同国債の価格が暴落したことから経営危機に陥った。その打開策としてデリバティブによる損失隠しが行われ、それに野村とドイツ銀行が関与したというのが検察の見立てだ。

 しかも、この損失隠しは結果的に最大で9億ユーロ(約1150億円)の損失を生んでおり、シエナ検察は、モンテパスキ銀行の資産がこれ以上流出しないよう、野村への担保などを差し押さえに動いたという流れだ。

 シエナ検察は、野村に差し入れられた担保以外に、野村がデリバティブ取引で得た利益8800万ユーロ(約112億円)の差し押さえにも動いている。損失隠しのデリバティブ取引が不当な利益で、没収に値するという判断だ。

 また、モンテパスキ銀行も野村に7億ユーロ(約894億円)、ドイツ銀行に5億ユーロ(約639億円)の損害賠償を求めている。

 野村は、最悪の場合、最大で9億ユーロ(約1150億円)といわれる損失分の担保の拠出を求められるほか、デリバティブ取引で得た利益の没収、モンテパスキ銀行への相応の賠償金、そしてイタリア当局にも和解金を支払わなければならなくなる可能性が指摘されている。

●野村は徹底抗戦の構え

 これに対し野村は、今回の資産の差し押さえは不当なものであり、裁判も含め徹底的に反論していく姿勢にあるが、野村の主張がどこまで認められるのか予断を許さない。イタリアは経済危機と政治の混迷が同時並行的に進んでおり、銀行問題が政治的な駆け引きの道具となりやすい素地がある。とくに外銀が絡んだ損失隠しは、国内の不満のはけ口を海外に向ける格好の材料となる。「野村は損な役回りを負わされた」(大手証券幹部)との見方も有力だ。

 いずれにしてもこの事件は、リーマン・ブラザーズの欧州部門を人材込みで買収したために起こった負の遺産と言える。再建を託された永井浩二CEOにとって、リーマンの悪夢はまだ終わらないようだ。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)