ソニーの本業は不動産、シャープは“アップル需要”減退で進む銀行頼み…大手電機の苦悩
(「シャープHP」より)
経営不振が続き“崖っぷち”とも報じられているソニー、シャープ、パナソニックの大手家電3社。そのなかで、2012年来「倒産の危機」とも伝えられてきたシャープに、「いよいよカウントダウンが始まったか」との見方が広がっている。
ソニーについては、5月1日付の読売新聞などで、電気事業の業績不振の責任を取り、平井一夫社長を始めとする役員約40人が今年の賞与全額を返上することが大きく伝えられている。しかし、円安での売上高増に加え、米本社ビル、ソニーシティ大崎ビルの売却益などで、12年度の連結業績予想を上方修正。2月時点で1300億円と予想していた営業利益が2300億円になる見通しだと発表した。「ソニーの本業は、不動産である。これは皮肉でも何でもない。ほかならぬソニー自身が、そう宣言しているようなものだからだ」(週刊ダイヤモンド)という皮肉な見方もあるが、財政の健全化は一定程度進んでいるようだ。
またパナソニックは、13年3月期にトヨタ自動車やホンダ、新日鉄住金など持ち合い株式の一部を約1000億円で売却したことが判明。5月2日付の日本経済新聞によれば、売却益の大半は有利子負債の返済に充てたと見られ、厳しい状況は変わらないものの、株高を活かして資産リストラを加速し、財務内容の改善につなげようとしている。
そんななかで、同じく5月2日付の日本経済新聞が、「経営再建中のシャープに対して、主力取引銀行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が1日、1000億円規模の追加融資枠を設ける検討に入った」と報じた。
シャープは9月に約2000億円の新株予約権付社債の償還を控えている。同紙によれば、両行はシャープに対し、転換社債の償還資金は資産売却など自助努力で最大限手当てすることを求めているが、資産売却の価格や実施時期により十分な資金を手当てできない場合に備え、追加融資枠を設けるとの判断に達したようだ。
5月1日付の産経新聞によると、シャープが3月期の連結最終赤字が、従来予想の4500億円を上回り、5000億円程度に拡大する見通し。シャープは液晶パネルの国際的な価格カルテルをめぐり、欧米で損害賠償を抱えており、納入先となった原告の米デルなど3社に約160億円を支払うことで、昨年7月に和解した費用の全額を特別損失に計上する(同紙)。
12年末には200円台を割っていたシャープの株価は4月15日、約9カ月ぶりに400円台に乗るなど、多少持ち直していたが、財務はまさに待ったなしの状況。2日の日経新聞によれば、みずほはグループ会社の幹部を役員級でシャープに派遣することをすでに明らかにし、三菱UFJも同様に役員級を派遣する方向で検討を進めている。なりふり構わず、財務基盤の強化に向けて動くようだ。 そもそもシャープの12年末の自己資本比率は9.6%で、製造業で健全とされる20~30%を大きく下回ってきた(日経新聞)。そのなかで、12年3月に台湾の鴻海精密工業から約670億円の出資を受けることで合意していたが、これが実現に至らず、大幅な財務改善ができないままでいた。