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みずほ・コーポ銀合併、システム移行の裏側と、旧三行の派閥意識払拭への苦悩

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お金をおろし忘れて阿鼻叫喚の声も。
(「みずほ銀行 HP」より)

 みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ銀行とみずほコーポレート銀行が合併し、新しい「みずほ銀行」の営業が7月1日にスタートした。この合併にともなうシステム移行作業で、6月29日午前0時から、7月1日午前8時までの56時間、全国の現金自動出入機(ATM)が一斉に停止した。

 日本経済新聞の7月1日朝刊によると、今回のシステム移行はコーポ銀の店名をみずほ銀に合わせる作業が中心で、銀行システムの中核には手を加えておらず、「できて当然」の内容だったという。このように比較的容易な作業内容だったにもかかわらず、みずほは通常の2倍のテストを重ね、4月には障害発生に備えた訓練も実施。さらに、29、30日には朝晩2回の会議で移行状況を確認し、佐藤康博社長は会社に泊まり込み、異例の厳戒態勢でシステムの移行に臨んだ。

 同行が、慎重を重ねたシステム移行の背景には、過去二度の大規模なシステム障害がある。5月26日付の朝日新聞のまとめによると、第一勧業銀行と富士銀行、日本興業銀行の三行を統合、みずほ銀とコーポ銀に再編した2002年4月、システム統合がうまくいかず、大規模な障害を起こした。さらに、東日本大震災後の2011年3月には、義援金振り込みが集中したのをきっかけに、振り込みの遅れや店舗でのサービス停止、ATMの取引停止などが発生。収束までに10日間を要し、金融庁から業務改善命令を出される結果となった。三度目の失敗を犯すようなことがあれば、「みずほはなくなるかもしれない」という緊張感が漂う中、今回のシステム移行が行われたようだ。

 そして、度重なるシステム障害の裏には、各メディアで繰り返し指摘されてきた、旧三行の派閥争いがあると見られる。朝日新聞は旧三行の派閥意識を払しょくできず、人材の融合が進まなかったことがシステム障害の一因だと分析している。

 みずほの人事は02年の発足からこれまで、みずほFGとみずほ銀、コーポ銀のトップを旧三行出身者が分け合う「三頭立て」だった。そのため、グループ間の意思決定が曖昧になり、古いシステムが温存された結果、発足時のトラブルの経験が生かされず、二度目のシステム障害につながった可能性が指摘されている。

 しかし、二度のトラブルで第一勧銀と富士銀出身のトップが相次いで失脚し、11年6月からは興銀出身の佐藤氏がみずほFGとコーポ銀頭取を兼務。さらに、今回の合併でみずほFGと新・みずほ銀頭取を兼務することになり、佐藤氏がみずほグループを統治する仕組みが整った。

 さらに、佐藤氏は今年2月に中期経営計画を発表すると同時に、旧三行の派閥意識払しょくを目指した新人事を発表している。6人の副社長を各分野のトップに据え、それぞれが銀行・信託・証券すべてを横断して管理する仕組みに改めた。縦割りだった組織体系に横串を刺すことで、ガバナンスの強化と意思決定の迅速化につなげていく――ダイヤモンドオンラインは3月7日配信の記事で、この人事を佐藤社長の「旧三行の背番号を徹底的にはずす」と宣言した意気込みが鮮明に現れたものだと評価している。

 しかし、現場からは旧弊からの脱却に懐疑的な声も出ているようだ。転職情報サイト・キャリコネは3月11日配信の記事で、みずほFG関係者の「新銀行では中年以降は旧三行の争い、若手はみずほ銀とコーポ銀で争いの構図が見えている」とのコメントを掲載。今回の合併によって、派閥争いが収束するどころか、拡大する可能性もあるというのだ。

 新・みずほ銀が7月1日に誕生し、サービス再開からこれまでトラブルは発生していないが、今回の移行作業はシステムの一部にすぎず、当面はみずほ銀とコーポ銀の二行のシステムをつないだ状態で業務が続けられる。7月1日配信のロイターの記事によると、本格的なシステム統合が行われるのは16年3月になる見込みだという。

 新たなスタートを切ったみずほ銀行は、新体制のもと派閥の勃興を抑え、メガバンクに相応しい強固なガバナンスを築くことができるのか。ネット上で「ATMの停止を知らず、ボーナス後なのにお金が下ろせなかった」という小さな騒動が起こっている裏で、金融庁の目が光っている。
(文=blueprint)