NEW
反応さまざまなあのニュースをどう読む? メディア読み比べ(8月13日)

アマゾンCEOがポスト紙買収、狙いは“アマゾン批判”封じと政治勢力へのロビー活動?

【この記事のキーワード】

, , , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

サイト「Amazon.com」より
 米新聞大手のワシントン・ポストは5日、ワシントン・ポスト紙を含む新聞発行事業を、米アマゾン・ドット・コムの創業者で最高経営者(CEO)のジェフ・ベゾス氏に売却すると発表した。ニクソン大統領の辞任につながった「ウォーターゲート事件」など、これまで多くのスクープを報じてきた名門紙の身売りを各メディアが伝えている。

 8月6日付日本経済新聞夕刊によると、ポスト紙はネット媒体などに押され、1990年代に80万部以上あった発行部数が今年3月末には47万部まで減少。有料の電子版でも出遅れ、新聞事業の売却を余儀なくされた。売却額は2億5000万ドル(約245億円)で、買収はベゾス氏個人によるもの。アマゾンは新聞事業に関与せず、ポスト紙の編集幹部が留任して発行を続けるという。

 8月6日付産経ニュース配信記事は、ポスト社がベゾス氏を売却先に選んだ理由を、「“アマゾン”流の経営ノウハウの伝授」を期待したのではないかと分析。ニューヨーク・タイムズ紙が有料電子版の契約者増で黒字転換を果たした例を挙げ、ベゾス氏の支援を仰ぐことで「電子版の改良や収益力の高い事業の構築」を狙ったのではないか、との米ITサイト編集者のコメントを掲載した。

 なお、ベゾス氏によるポスト紙買収のニュースに、米メディア業界の専門家たちは期待を寄せているようだ。ウォール・ストリート・ジャーナルが8月7日配信記事で伝えている。

 新聞コンサルタントのアラン・マッター氏は、ポスト紙の収益改善には「読者の獲得、各顧客のニーズに合った製品・サービスの提供、収益化」が必要だと指摘。そして、この3つの要素は、ベゾス氏とアマゾンがこれまでに培ってきた能力に合致するとコメントしている。また、調査会社Eマーケターのコミュニケーション部門責任者、クラーク・フレッドリクセン氏は「アマゾンの成功は出版から小売、動画配信に至るまでさまざまな業界に極めて破壊的な影響を与えた」と述べ、「ベゾス氏はネット販売についてよく分かっている。ネットがポスト紙と業界双方にとって有望な新たな販路であることはない」と語った。この買収がポスト紙のみならず、低迷する新聞業界にも何かしら影響を与えると考える専門家が多い。

●買収により政治へ接近?

 しかし一方で、ポスト紙買収によってベゾス氏とアマゾンにもたらされる、間接的な効用を危惧する声もある。現時点では「あくまでも個人としての買収」と伝えられているものの、「ベゾス氏にとってポスト紙買収は『趣味』とは言い切れない」と指摘するのは、8月7日配信の日本経済新聞電子版の記事だ。

 ポスト紙の買収を狙っていたのはベゾス氏だけではない。ポスト社は新聞事業の売却に当たって入札を実施し、6社ほどが応札している。ベゾス氏が競合を押しのけてまで手に入れようとしたのは、「政治の街・ワシントン」でのポスト紙の影響力を、“本業”であるアマゾンに利用しようとしたのではないかというのだ。

 ニューヨーク在住の文芸エージェント、大原ケイ氏が8月6日、自身のブログに投稿した記事によると、アメリカではアマゾンの低賃金雇用、いわば“ブラック企業化”が問題になっているという。リベラル寄りのポスト紙もこの問題について、現在のところ厳しい見方を示しているものの、ゾベス氏がオーナーになったことで、今後は「アマゾンを一方的に攻撃するような記事は載せにくいだろう」と危機感を募らせている。

 さらに、ポスト紙のオーナーとなったベゾス氏には、ワシントンで行われる政治家のパーティーにもお声がかかり、「ロビイストを雇うのと同じ効果があるだろう」とも指摘。また、ポスト紙に好意的に取り上げてもらおうと、議員からアマゾンにすり寄ってくる可能性もあるとしている。

 ベゾス氏のポスト紙買収は政治利用にあるのか――。大原氏は「ワシントン・ポストがこれからもジェフ・ベゾスオーナーとは一線を画し、中立的な立場を護っていけるのかどうかは、これからの同紙の労組や、最低賃金や、中流階級の雇用などに関する記事で判断できるだろう」と述べている。ベゾス氏の“本当の狙い”はどこにあるのか。ポスト紙の事業立て直しと、その過程での報道姿勢の変化に注目が集まる。
(文=blueprint)