LINEモールは出店者を募り売り上げから手数料を取るモール型で、楽天市場と同じビジネスモデルだが、楽天市場とは、個人間の売買を中心に置くことで差別化を図る。仮想商店街に企業や商店が出店する楽天市場と、個人が商品を出すオークションサイトを合わせたような形態になる。
LINEは音楽配信も年内にスタートする。ネット通販は国内のみだが、音楽配信は国内外でほぼ同時にサービスを始める。新サービスをテコに、2億人を突破した利用者数を年内に3億人に増やしたい考え。スマホ時代のポータルサイト(玄関口)としての地位を確立しつつあるLINEは、今度はネット通販でアマゾンや楽天に立ち向かう。
LINEがサービスを開始したのは、東日本大震災が発生してから3カ月後の2011年6月。有線放送のネットワークが使えず、家族や知人の安否を確認できなかったことをヒントに開発された。24時間、いつでもどこででも無料で好きなだけ通話やメールがやりとりできる新しいコミュニケーションアプリだ。
簡単にメッセージの交換ができることから、10~20代の若者を中心に利用者が増えた。サービス開始以来、2年あまりの間に海外を含めて登録ユーザー数は2億3000万人(13年8月時点)で、前年比で4.6倍となった。国内のLINE利用者は4700万人にのぼる。
LINEが急速に普及するにつれて、LINEが悪用される事件が急増した。女子中学生が犯罪に巻き込まれたり、女性に呼び出された男性が恐喝されたりする美人局(つつもたせ)の被害が相次いだ。加害者と被害者がLINEのユーザー向けの掲示板で知り合うケースが目立った。
LINEモールの開設で最も懸念されているのが詐欺の舞台となることだ。すでにLINEでは詐欺事件が起きている。今年3月、愛知県警は19歳の無職少年を詐欺容疑で逮捕した。LINEを使った詐欺事件の摘発は、これが全国初だった。逮捕の容疑は昨年10月、LINEのチャット上で女性に成りすまし、22歳のアルバイト男性に好意をほのめかした上で、「ヤクザに借金を返すまでほぼ監禁なの」「殺されるかも(しれない)」などといった事実と違うメッセージを送り、この男性から104万円をだまし取ったとされる。少年は女性の弟を装って手渡しで金を受け取っていた。同様の方法でおよそ200人とメッセージをやりとりして、7人から計200万円を詐取したという。
LINEモールは「いつでも、どこででも、誰とでも、簡単に売買を行うことができる」を謳い文句にしているが、犯罪を目論む人たちにとっては、好都合なモールといえるかもしれない。
●無料交流サイトの収益源はゲーム課金
LINEの親会社は、韓国のインターネット大手・NHN。1999年の設立で、検索サイトNAVER(ネイバー)は韓国で6割のシェアをもつ最大手だ。00年9月にNHN Japanを設立、オンラインゲーム「ハンゲーム」の事業を行っていた。10年4月にライブドアを63億円で買収し、NHNの名前が世間で知られるようになった。
12年1月にNHN傘下の日本法人3社を経営統合した。LINEなどを運営する旧ネイバージャパン、「ハンゲーム」などのゲーム事業を担う旧NHN Japan、ポータル事業の旧ライブドアが1つの会社になり、NHN Japanの商号を引き継いだ。今年4月1日、NHN Japanは会社分割。LINE事業やウェブサイトを担うLINEと、ゲーム事業の新NHN Japanに再分割した。
LINEは13年4~6月期の業績を開示した。売り上げ高は前年同期比で348.9%増、直前の四半期(1~3月期)に比較すると45.3%増の128億円。売り上げ以外の数値は公表していない。売り上げのうちLINE事業は前の四半期比で66.9%増の97.7億円。全売り上げの76%をLINE事業が占める。LINE売り上げの内訳はゲーム課金が53%、スタンプ課金が27%になっている。この数字をもとに計算するとゲーム課金の売り上げが51億円、スタンプが26億円ということになる。
収益の柱はゲームアプリ内での課金。無料で集客したユーザーをゲームサイトに呼び込み、ゲームのアイテム課金で稼ぐというビジネスモデルだ。無料のSNS(交流サイト)を標榜しているが、内実はゲームサイトの課金を主な収益源としている。メッセージをやりとりするときに使われるスタンプ(大きな絵文字)の有料販売も収入源となっている。今後は、LINEモールの開始で出店者からの手数料収入が加わる。
(文=編集部)