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三菱UFJ銀マルチ勧誘・巨額損失事件、被害女性が告訴へ〜銀行側は謝罪するも責任認めず

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三菱東京UFJ銀行本店(「Wikipedia」より/Kakidai)
 三菱東京UFJ銀行(以下、三菱UFJ)の行員らは2011年から13年にかけ、顧客の女性を勧誘しマルチ商品に投資させるなどして、約4億円を損失させた事件で、被害者側の弁護士が事実を確認すべく同行に対して送付していた内容証明付きの質問状に対し、9月末、同行からの回答が届いた。

 事件の詳細は『三菱東京UFJ銀行員、顧客の高齢者女性をマルチ投資へ勧誘し、約4億円の被害与える』の通りだが、簡単に振り返ると、東京都在住の佐藤幸子さん(仮名)が三菱UFJ浜松町支店(現在は新橋支店に統合)を訪れたのが10年。そのとき担当になったのが行員Y(当時30歳)だ。

 佐藤さんは11年1月に投資を開始し、1年後の12年1月までに投資総額は3億円を超えたが、元本ベースで約8000万円の損失が出た。佐藤さんは、Yに安全な投資に切り替えるよう頼んだが、Yは「これまでの損を取り戻しましょう」と、後任のKとその友人でコンサルタントを名乗るSを連れてきた。YとKは法政大学の同級生で、KとSは同郷(福島県白河市)の幼馴染という関係だ。

 3人は「1カ月で3%の金利」を謳い文句に、大阪のマルチ会社・スピーシーへの投資を勧誘した。佐藤さんは三菱UFJの口座からスピーシーに2200万円送金し、別の銀行口座からも4000万円送金させられた。そして3月、Kに一任するかたちで佐藤さんの三菱UFJの投資信託は解約され、10日間のうちに3億円がスピーシーに送金された。

 一方、Sは13年2月、「インドネシアで事業を始めるので出資してほしい」と佐藤さんに要求。これに対し佐藤さんは、生命保険を解約して現金で2300万円を用意したところ、2000万円をSが持ち出し、300万円をKが持ち帰った。これが事件の概要だ。

●スピーシーの投資詐欺事件

 ところで、佐藤さんが投資勧誘されたスピーシーとは一体どんな会社なのか?

 大阪の投資会社・スピーシーは08年頃から、英国政府公認の賭け業者「ブックメーカー」を使った投資を企画し、高配当を謳って出資金を集めていた。同社は「(同じ試合でも)分散して賭ければ、どんな試合結果でも必ず利益が出る。香港で数千人を雇って賭けを行っている」などと説明していたという。

 月に出資額の3~10%という高配当のほか、新たな会員を紹介するとマージンも受け取れる仕組みなどが口コミで広がり、出資者を急速に増やした。しかし、スピーシーは昨年5月以降、会員への配当を中止して解約にも応じず問題が表面化し、そのまま破たんした。

 昨年7月の読売新聞記事によると、出資者は少なくとも全国約6000の個人・法人、出資金は計約360億円に上るとされるが、司直の手が入っていないため、被害の全容はつかめない。夕刊紙記者は「被害規模は400億とも450億に上るとも言われます。大阪府警が捜査を担当していますが、マルチの手法を使った複雑さと、投資先が海外であることなどが壁となって、捜査は遅々として進んでいないようです」と捜査の状況を解説する。

 被害者のうち43人は昨年8月に大阪で集団訴訟を起こしており、28人は今年3月に東京で集団訴訟を起こしている。

「これらの民事訴訟を提起しているのは『あおい法律事務所』で、カネの流れを調べるために、スピーシーと取り引きのあった金融機関に対し、取引履歴の開示を要求しています。しかし、スピーシーからの承諾が得られないことを理由に応じない金融機関もあるといいます。スピーシーの中心人物たちは事件が発覚する直前、リヤカーで多額の現金を運び出したという話まで伝えられています」(経済誌記者)

 カネの流れが解明されるまではまだ時間がかかりそうだが、1つ気になることがある。反社会的勢力に流れた可能性だ。投資詐欺に詳しい弁護士は「一般論として、マルチなどの悪徳商法の首謀者は、反社会的勢力とつながっていることが多い。スピーシーに出資されたお金もウラの世界に流れた可能性はある」と見ている。

 また、ジャーナリスト・伊藤博敏氏は9月5日付「現代ビジネス」記事でスピーシーの中心人物たちがプロ中のプロであると指摘している。

「小池隆一といえば(略)、大物総会屋として知られているが、会員制月刊誌の『ベルダ』(13年9月号)によれば、スピーシー関係者が主導するインドネシアの鉱山事業に絡んでコンサルタント契約を結んだのに、着手金さえ支払われてないとして、トラブルが生じているという。(略)確かに、彼らは海千山千の総会屋を手玉に取るだけのテクニックを身に付けている。この事件の複雑さは、単なる投資詐欺ではないことだ」

●銀行側は責任認めず

 10月2日、佐藤さんの代理人を務める桃谷一秀弁護士の事務所を、三菱UFJの顧問弁護士と新橋支店長が訪れた。その支店長は「このたびは行員がご迷惑をかけました」と謝罪し、すぐに帰ったという。その後約40分間、三菱UFJ側の弁護士は次のように弁明した。

(1)Yは佐藤さんに招待されたという東京タワー近くの高級料理店に行っていないし、食事を4人でしていない。
(2)Yは3人で佐藤さんの家には訪問していない。
(3)Yは(スピーシーから)紹介料を受け取っていない。
(4)YはKと2人で佐藤さん宅に行って「銀行の話ではないが、いい話があるから」と説明したところ、その人を紹介してと言われてSの携帯番号をメモで渡した。
(5)Kについては銀行側の調査に応じてないので何も分からない。

 三菱UFJの顧問弁護士は「今の段階では、お見舞い程度しか支払うことができないので、それでは納得できないでしょうから裁判を起こしてください。判決に従います」と伝えてきたという。わずか10日間のうちに、70代後半の高齢者の口座から3億円もの大金がKによって引き出され、それらのお金の一部がスピーシーを通して反社会的勢力に渡っている可能性もあるというのに、同行は「責任はない」と主張しているわけだ。