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日高屋、快進撃支える異色戦略とは?小判鮫出店、味を追求しない、中間業態…拡大への壁も

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 つまり、日高屋の業態は、居酒屋とファストフードの中間的な業態なのだ。この珍しい業態が、結果的に露店規制で消えた屋台の代わりになったといえる。

 日高屋は主力メニューのラーメンで「こだわりの味」を追求しないのも特徴だ。「客の60%程度がおいしいと思ってくれればそれで良い」と神田氏は言う。「行列のできるラーメン店」のような「そこにしかない味」は通が求める味であって、不特定多数の客が繰り返し食べに来てくれる味ではないからだ。

 経営コンサルタントは、日高屋のビジネスモデルを、業界内で競争しながら協調する典型的な「コーペティションモデル」だと、次のように解説する。特徴は2つある。

 1つ目は「小判鮫出店」戦略。日高屋は吉野家、マクドナルド、庄やなど、先に出店している大手外食チェーン店の近くを選んで出店する。これら大手チェーン店にはそれぞれ固定客がついているわけだが、いくら吉野家やマクドナルドのファンでも、毎日牛丼やハンバーガーで済ませる人は珍しい。したがって、大手外食チェーン店がすでに出店している中へ同社が進出することで「ハンバーガー、牛丼、あしたは日高屋」(日高屋のテレビCM)の行動パターンを確立しているようだ。

 大手チェーン店の近くに店を出せば、その固定客がおのずと日高屋に流れてくるというわけだ。

 小判鮫出店には、おまけもある。大手チェーン店は駅の乗降客数、人の流れ、客層、家賃相場など綿密な立地条件調査をした結果に基づき出店してくる。つまり、その駅前繁華街への出店が採算に乗るか否かを、大手チェーンがすでに調査を済ませているわけだ。だから、日高屋は自社でなんの経費負担もせずに、採算の取れる立地を見つけられる。

 2つ目は競合による集客だ。横浜中華街や秋葉原電気街には同業者が集積している。そして、地域内で同業者が激しい競争を繰り広げることで地域に活気を生み出し、それが魅力となって他地域からも客がたくさん集まってくる。

 日高屋の出店もそれに似たようなもので、小判鮫出店の結果、「あの通りに行けば牛丼もハンバーガーもラーメンも食べられる」フードコートのような集客構造を日高屋がつくり出しているという。

●「600店」への課題

 日高屋の当面の出店目標は600店。現在の倍近くという高い目標だ。神田氏は「南関東の山手線、総武線、常磐線、東海道線の各駅に出店すれば楽に達成できる目標だ。JRの駅を降りたら、必ず日高屋があるようにしたい」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/08年12月12日号>)と意気軒高だ。

 だが、この目標達成には、いくつかの不安要素が内在している。

 第1の不安要素が集客力だ。集客の切り札だった生ビールの値下げが限界に達しているのだ。日高屋が成長を続けてきた最大要因が「チョイ飲み」のビール類とハイボール。11年夏に生ビールの値段を1杯390円から350円へ、12年夏には350円から300円と、客数が伸び悩むたびに値下げでテコ入れしてきた。だが「これ以上、値下げを続けるのは難しい」(同社関係者)状況にある。300円以下では採算割れになる上、飲酒目的の客が増えると滞在時間が延び、客回転率が落ちるからだ。この対策が、日高屋にとっては頭の痛いところだ。

 第2の不安要素がコンビニの外食浸食だ。コンビニは店内で食事ができるイートインコーナーを増やしたり、100円台の低価格入れたてコーヒーを販売するなど、ファミレスやファストフードなどから着実に客を奪っている。日高屋が主力メニューとするラーメンでも、有名ラーメン店とPB(自主企画)商品の拡充に励んでいる。駅前繁華街の出店も日高屋と同じだ。コンビニからいかにして客を守るか、今のところ妙策はない。

 第3の不安要素が食の安全性だ。同社は食材の調達コストを下げるため、ネギ、人参など中国産の野菜類を多用している。これを知った客が不安を覚えて日高屋離れをする例が少なくない。業界関係者は「中国産食材の使用をやめないと、日高屋成長のアキレス腱になる可能性がある」と心配する。

 こうした課題を乗り越え、日高屋はますます成長し続けていくのか? その行方に注目が集まっている。 
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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