その代表格といえるのが、ゴールデンタイム今世紀最低視聴率を記録した『夫のカノジョ』(TBS系)だ。11月21日放送の第5話で平均視聴率3.0%(ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)という数字を記録し、第8話で実質上の打ち切りが決定したことは、大きく報じられた。
そしてこれ以外では予想外の苦戦を強いられているのが、過去に数多くの高視聴率ドラマで主演を務めてきた、人気アイドルグループ・SMAPの木村拓哉主演『安堂ロイド A.I.knows LOVE?』(同)だ。木村は天才物理学者と100年後の未来から来たアンドロイドの2役を務め、初回こそ平均視聴率19.2%とまずまずの出だしだったが、その後は徐々に下がり、直近の11月24日放送分(第7話)では同11.2%で、一桁台突入の可能性も取り沙汰される事態となっている。
だが、一部メディアやネット上などでは低視聴率と騒がれてはいるものの、昨今のテレビドラマの全体的な低調さから見ると、飛びぬけて視聴率が低いというわけではなく、一部で根強いファンを獲得しているという声も聞こえるが、一般の人々は『安堂ロイド』に対しどのような感想を抱いているのだろうか?
まず、視聴率低調の要因として、あまり連続ドラマとしては馴染みのないSFというストーリー設定を挙げられることが多いが、この点については、「非常にチャレンジングであり実験的という意味で、評価に値する」「変わっていて面白い内容だと思う」という肯定的な意見もネット上では散見される。しかし、テレビ局関係者の間では、「ストーリーが突っ込みどころ満載だ」「キムタクの名前で視聴率が取れた時代は終わったのではないか」「今回含め、どのドラマでも“キムタク”という演技でマンネリだ」という声も少なからず囁かれているのも事実だ。
分かれる一般視聴者の感想
こうした否定的な見方がある中、まず30〜40代の木村ファン(女性)に感想を聞いてみたところ、次のように感想が分かれた。
「クリスマスも近いし、SFではなく、やっぱりキムタクが演じるベタベタの恋愛ドラマが見たかった」
「キムタクは『キムタク本人を演じる』という姿がやっぱり見たい」
「キムタクは『キムタク』しか演じられない。ファンもそれを期待している」
また、特に木村ファンではないが『安堂ロイド』を毎週見ているという一般視聴者からは、木村を評価する一方で、ドラマの内容自体にはやや違和感を示す意見が寄せられた。
「キムタクはいい演技だと思う。もっと脚本の内容がよかったら視聴率取れたのに残念」
「この内容なら『半沢直樹』の(主演俳優である)堺雅人が演じても視聴率は取れない」
「キムタクの演技は魅力があるし、やっぱり気になって次も見てしまう」
そして「途中で見るのをやめた」という人々は、その理由を次のように語る。
「『SPEC』や『ケイゾク』を書いた脚本家が担当ということで期待していたが、ひどい脚本なので途中で見るのをやめた」
「単純につまらなくて魅力がない」
「このドラマ企画自体がキムタクに“ハマって”いないと感じた」
このほかにも「そもそも初回から見ていない」という人々からは、『安堂ロイド』というタイトルや事前のプロモーションを疑問視する次のような声が聞かれた。
「タイトルがひどすぎる。その段階で見る気がなくなった」
「タイトルや宣伝ポスターなどのセンスが古すぎる」
「予算もないのにSFアクションドラマなんて、前提として無理がある」
実験的、挑戦的なTBSの姿勢に評価の声も
このように一般の人々から賛否両論の感想が聞こえる中、『安堂ロイド』を制作・放送するTBSは、今回の視聴率低迷の理由について、どのように感じているのだろうか?
「いわゆる90年代までのタレント名だけで数字が取れるという時代を経験してきた世代の制作陣が、旧態依然とした状態のままで企画・制作したことも大きな要因だと感じている」(同局関係者)
このように自局を批判するTBS関係者の見方とは裏腹に、他局の関係者は「SFで、かつ奇抜なストーリー展開ということもあり、一般視聴者が入り込みにくい要素が強いのは確か。しかし、そういう実験的な挑戦にあえて取り組むTBSの姿勢は評価できる。多少視聴率を度外視しても、そういう試みをしていかなければ、無難に視聴率が取れそうな番組ばかりが増え、ますますテレビがつまらなくなっていく」と、“テレビ離れ”が叫ばれる今だからこそ、TBSの姿勢を評価する声も聞かれた。
こうしたテレビ局関係者、そして木村ファンを含む『安堂ロイド』視聴者の応援を受け、最終回に向け、果たして視聴率は上昇していくのか? 今後が気になるところである。
(文=成田男/フリーライター)