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吉田潮「だからテレビはやめられない」(10月21日)

キムタクは板尾?“思い込み”が楽しさを増幅させる『安堂ロイド』の正しい見方

文=吉田潮
キムタクは板尾?“思い込み”が楽しさを増幅させる『安堂ロイド』の正しい見方の画像1『安堂ロイド~A.I.knows LOVE?~』公式サイト(TBS HP)より

 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

「思い込み」は非常に厄介で、払拭するのに時間がかかる。しかし、時として思わぬ副効用もある。思い込みによって新たな楽しみを会得する場合もあるのだ。今クール(10〜12月期)放送の連続テレビドラマで、そんな思い込みが功を奏している作品を紹介したいと思う。

 ひとつは、TBS肝入りの超SF大作(?)日曜劇場『安堂ロイド~A.I.knows LOVE?~』(毎週日曜21時〜)。初回を観た時に頭をよぎったのは、映画『電人ザボーガー』だった。そう、『安堂ロイド』主演の木村拓哉が、どう見ても『電人ザボーガー』(2011年公開)の板尾創路にしか見えないのだ。あれ? これってデジャヴ?

 映画では、ロボット・ザボーガーとともに闘う刑事の25年後を板尾が好演。中途半端なロン毛ヅラに、くっきり深いほうれい線。糖尿病を患い、失職中という設定で、なんともいえない「くたびれ感」がリアルだった。そんな板尾が今度はロボット役そのものを演じている(ように見える)。

 主演・板尾創路という思い込みで観はじめると、このドラマも俄然リアリティを増す。主人公を美化しすぎる感も薄まり、くたびれた板尾を心のどこかで応援したくなる。さらに、「特撮ヒーロー系」というフィルターをかければ、なんとなく心優しくなって、穏やかに温かい目で観ることができる。このフィルターがあれば、ご都合主義の展開も、芝居が本当は不得手な出演者(桐谷美玲とか本田翼とか)もノープロブレム。どことなく生気を失ってあきらめの境地にいるような柴咲コウも、特撮モノと割り切って、乗り切ってほしい。ここ最近の柴咲は「口うるさい俳優やアイドルの茶番ドラマ」に付き合わされることが多くて、死んだ魚のような目になっていることが多いから。

 さらに思いきって、このドラマは松本人志監督作品、とでも思えばいい。どこかに玄人好みの笑いのセンスを散りばめてあり、そこに気づかない素人を「笑いがわかってない」と見下すというスタイルね。ドラマ鑑賞に新風を吹き込んでくれた板尾に感謝しなければいけない。発想の転換がうまくできたもんだから、このドラマは最終回までずっと観続けたいと思う。

 もうひとつ。深夜土曜にひっそり放映されている15分ドラマ『裁判長っ!おなか空きました!』(日本テレビ系/毎週土曜25時20分〜)では、フリーアナウンサー・高橋真麻が主演を務めている。裁判所が舞台で、基本的に登場するのは新人弁護士(高橋)と裁判長(佐藤二朗)と検察官(戸次重幸)。毎回繰り広げられる裁判は完全に悪ふざけで、おちゃらけまくりの法廷モノだ。

 真麻はただひたすらに一生懸命ふざけたり、変顔をしたり、暑苦しく聞き間違えたり、言い間違えたり、という役どころ。そのボケに佐藤と戸次が付き合い、振り回されつつも生ぬるく見守る。記憶に残るほどでもないギャグの応酬は、福田雄一作品の特長でもある。

 あ、真麻だと思っていたら、北山宏光という人だった。ジャニーズの「Kis-My-Ft2」(正しい読み方がわからん)というアイドルグループのひとりだそうだ。真麻に似ているせいか、とても親近感がある。茶の間ウケしそうなアイドルだなと気づいた。

 板尾創路・主演作と高橋真麻・主演作。そんな目で観始めると、アイドルドラマも少しは興味がわいてくる。「なんじゃこりゃ?」と嘲笑で終わらせてしまうのも、ちょっともったいない。視聴者が積極的に脳内変換をすれば、世界はほんの少しだけ広がる。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

吉田潮

吉田潮

ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。東京新聞でコラム「風向計」執筆。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)などがある。

Twitter:@yoshidaushio

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