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auのKDDI、あきれた二枚舌営業〜購入時に虚偽説明、強いクレームには特別に補償対応

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KDDI本社が所在するガーデンエアタワー(「Wikipedia」より/呉)
 米アップルのiPhone 5s/5cの発売、およびNTTドコモのiPhone商戦への参入で話題沸騰の携帯電話業界。その陰で、KDDI(au)の不誠実な消費者対応が大きな問題となる可能性がある。その行為は、「詐欺的」と言われても仕方ないもので、消費者は今後、auの動向に注目していく必要がある。

 KDDIは今年5月21日、不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく措置命令を消費者庁から受けた。その概要は、昨年発売したauのiPhone 5の高速通信規格4G LTEで、受信最大75Mbpsの人口カバー率を96%とうたって販売しておきながら、実際には14%でしかなかったことに対して、消費者庁が一般消費者に正しい事実を伝えるように措置命令を下したものだ。

 これを受けてKDDIは同日、田中孝司社長ら関係役員・幹部6人が報酬を一部返上する「処分」を発表。田中社長は月例報酬の20%を3カ月間返上するほか、残り5人は月例報酬の10%を同じく3カ月返上することになった。軽い処分とはいえないだろう。

 ここまでなら、不祥事を起こした大企業が取る一般的な手法である。しかし、KDDIは実に姑息な手段で事態の収束を図ろうとしていた。ここからは筆者の消費者としての経験を説明しよう。

 10年以上auの携帯電話を使っている筆者は昨年12月、auのiPhone 5に切り替えた。大手量販店のauコーナーで購入したが、その際に「4Gの通信エリアは狭くないか」と質問したが、「大都市であれば、ほとんど問題なく使えます」との回答を得て、切り替えを判断した。ところが、筆者は東京や名古屋、広島などの地域に出張に出向くことが多いが、どこでも「3G」になっていることが多く、さらにパケ詰まりも頻繁に起こり、速くて快適と思っていた4G LTEの利便性を享受できることはほとんどなかった。

 しかも、ジャーナリストという仕事は固定電話など不特定多数に電話をかけることが多く、一般の人よりは通話料金が高くなる。4G LTEの場合は、基本料金を多めに払って無料通話時間が長く付くというサービスがないため、筆者の場合、切り替え以前に比べて電話代が月に1万円近くアップした。4G LTEはほとんど使えないうえ、電話代は上昇するという、まったくもって切り替えは失敗だった。

 そして今年6月、解決策はないかと思い、auのお客様相談窓口である「157」に電話すると、派遣社員が対応して「この件は申し訳ないとしか説明できません」という納得のいかない回答だった。そこで、KDDI本社の代表電話にかけて、本社のお客様相談対応と直接話をすることにした。厳しい口調で不満を伝えると、「井上様はお口がお堅いですか?」と切り出された。「はい堅いです(笑)」と答えると、担当者が、アンドロイドの4G LTEに切り替えれば、iPhone 5の端末残価と解約違約金はau側で面倒を見ますという主旨の説明をした。補償するという意味合いが強かった。アンドロイドの4G LTEの人口カバー率は高く、iPhone 5のような事態にはならないとのことであった。

 KDDIは公式的には消費者への補償はしないと説明していたのに、実際の現場では強くクレームを付ける消費者には補償対応している。まさに「二枚舌営業」なのである。今度は取材として広報部に「二枚舌ではないか」と聞くと、広報部長は「公式見解と個別の顧客対応は違う」と説明、「二枚舌営業」を自ら認めた。

 その後、筆者は1カ月近く迷ってNTTドコモに切り替えた。電話は通話料金お得なプランがあるフィーチャーフォン(ガラケー)、ネットは4G LTE対応のスマートフォンという2台持ちで、1カ月の維持費はauのiPhone 5よりも1万円程度安くなる見込みだ。

●大株主のトヨタには特別対応?

 その間、筆者は不思議なことを体験した。自宅では「3G」の表示だったのに、激しいクレームを付けた直後から「LTE」の表示になった。おそらくau側が通信設備基地になんらかの手を加えて対応したのであろう。また、JR名古屋駅前のトヨタ自動車が入る高層ビル内の奥まった場所にある、電波が届きにくそうなトヨタ役員が記者会見で使用する会議室では、くっきりと「LTE」表示だった。同じく名古屋駅近くの電波環境が良いと見られるホテルではauのiPhone 5は「3G」表示だったが、ソフトバンクのものは「LTE」表示だった。

 これらの疑問についてKDDI広報に聞くと、トヨタへは「特別対応」しているという。トヨタはKDDIの大株主であり、業務用携帯はauを使っているからであろう。

 そしてKDDIが消費者を馬鹿にしている極めつきは、今回の新型iPhone 5s/5cの販売に関してだ。新型は通信エリアが広い「800メガヘルツ帯」に対応しているため、4G LTEの人口カバー率が高い。一方で昨年出たばかりのiPhone 5は依然として人口カバー率は低いままだ。旧型iPhone 5の利用者をなめきっている行為と言えるのではないか。

 携帯電話会社に勤務経験のある大手家電量販店の店員がこう話す。「日本の携帯電話会社は、表と裏でさまざまな対応をしているので、何か問題があれば本社に電話して、激しくクレームを入れたほうがいい」

 KDDIを含めて、日本の携帯電話会社は高い利益率を誇っている。ぼろ儲けと言っても過言ではない。しかしその一方で消費者をなめている行為も散見される。また、数少ない有望な内需産業であり、広告スポンサーでもあるがゆえに、大手メディアは批判もしづらい。これだけ普及して生活に欠くことのできなくなった携帯電話は、今や「社会的共通資本」の領域に近づいている。消費者が、携帯電話会社の社会的責務をしっかりチェックしていく時代が来ている。
(文=井上久男/ジャーナリスト)