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武田薬品、“異例の”外国人経営陣主導で進む改革の裏側〜高収益企業復活なるか?

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 このように武田薬品の経営の中枢を外国人が担う体制になった背景には、長谷川氏の強い意向があったとみられている。実際に12月1日付日経新聞のインタビューで同氏は、「正直、私の持つグローバル・マーケティングの感覚は古い。新興国については経験がないから感覚的にわからない。新興国でリーダーとしての成功体験のある人がやらないとダメだ」と語っている。今回のウェバー氏起用についても、社外有識者で構成するグローバル・アドバイザリー・ボードのメンバーが推薦した候補者を、CEOを選ぶ専門コンサルタント会社を使ってふるいにかけ、2人に絞り込んだ結果だという。

 ちなみに武田薬品の取締役会での議論、文書はすべて英語であり、長谷川氏は「取締役会のグローバル化は定着した。これが社内に波及していく」と自信を見せるが、“ポスト長谷川”候補といわれてきた複数の日本人役員をどう処遇していくのかという問題が残る。

●営業利益減で厳しい経営環境続く

 長谷川氏が経営幹部への外国人登用を急ぐ背景には、武田薬品の厳しい経営環境がある。

 武田薬品の13年9月中間決算は、営業利益が前年同期比7.9%減の999億7600万円となり、中間期としては14年ぶりに1000億円の大台を割り込んだ。同社は円安で海外での研究開発費や販売費などがかさんだためだと説明したが、「業績の長期低迷は深刻」(市場関係者)との見方も強い。売り上げを見ると、同社の医療用医薬品は5%増の7487億円だったが、うち国内は1%減の2909億円と苦戦した。2型糖尿病治療薬の「アクトス」と高血圧症治療薬の「プロブレス」の落ち込みが響いた。

 14年3月期の業績予想は、売り上げが前期比7.9%増の1兆6800億円、営業利益は14.3%増の1400億円、当期利益は27.6%減の950億円を見込んでおり、上期に比べて営業利益の絶対額の水準はかなり低い(上期は999億円、下期は401億円)。

 また、武田薬品は14年3月期から16年同期まで、1株当たりの年間配当を180円に据え置く方針で、株価を維持するための対策でもある。同社株価の推移をみると、12月3日の終値は5100円。今年の高値である4月25日の5520円より420円下がっている。医薬品国内2位のアステラス製薬は、11月18日に今年の高値6230円を、ジェネリックの沢井製薬も11月13日に同7540円をつけており、業界トップである武田薬品の株式市場での評価は、ウェバー氏社長就任発表までさえなかった。

 武田薬品は通期の連結純利益が2300億円を超えていた09年3月期に、1株配当を180円に増額した。ここ数年利益が落ち込む中で年180円の配当を維持すると、配当性向は150%近くまで高くなるが、150%というのはその期の利益だけでは配当の原資を賄えないということを意味し、株式市場では「タコ配」(タコが自分の足を食べるという意味)と呼ばれている。かつて高収益会社の代表だった同社が「タコ配」を行うことは、業界内で驚きを呼んだ。

●“しがらみない”コスト削減政策

 こうした厳しい経営環境の中、武田薬品はCFOのロジェ氏の指揮の下で、前出の「プロジェクト・サミット」などを通じて新薬拡販とコスト管理(削減)政策を推進していく。

 新薬の研究開発費は今期3400億円と前期比5%増であり、来期以降もこの水準を続けたいとしているが、利益を積み上げないことには新薬の研究開発費を増やすこともできない。

 コスト収益改善策としては、広告代理店の絞り込みや海外の研究開発拠点の集約などで、18年3月期までに1000億円以上のコスト削減を図る。一連の取り組みで今期から18年3月期まで、年ごとの売り上げの伸び率は1ケタ台半ば、営業増益は20%を目指すという。また、13年3月期の業績を大きく下方修正する一因となったグループ会社幹部の株価連動型報酬制度は維持するという。武田薬品は、この制度が幹部社員の士気を上げ、経営効率を高め、プラスに作用していると説明するが、買収した企業の幹部をつなぎ留めるためともみられている。

 そしてコスト収益改善策の一環として、今後4年間で従業員の5%弱の人員削減も予定している。ロジェ氏は「武田では何のしがらみもない」と躊躇なく人員削減を進めていく意向を示しているが、アナリストの間からは「武田には、そんなに人材がいないのか」と外国人幹部の採用に疑問の声が聞こえてくる。

 外国人幹部が経営の舵取りを担う武田薬品は、果たして再び「高収益企業」として甦ることはできるのか? 今後の動向に、製薬業界や市場関係者の注目が集まっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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