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知ってるようで知らない……薬局の歩き方・クスリの選び方 第14回

ノンシリコンシャンプーは安物成分でぼったくり?シリコン悪玉論、無添加礼賛のウソ

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「Thinkstock」より
 生化学分野に精通し、サイエンス・コミュニケーターとしても活動するほか、教育機関で教鞭も執っているへるどくたークラレ氏が、薬局で買える医薬品や健康・栄養食品を分析。配合成分に照らし合わせて、大げさに喧伝されている薬や、本当に使えるものをピックアップします。

 以前、シャンプーについて記事を書いたところ、大きな反響を頂いたので、さらにシャンプーについて言及してみます。
 
 今回は、シャンプー業界を化学物質という観点から分析して、シャンプー業界にはびこる嘘や迷信に可能な限りメスを入れてみようと思います。

 加えて、謎のノンシリコン信奉など、都市伝説めいた宣伝をバイアスなしに評価し、皆様のシャンプーを選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。

●ノンシリコン神話~シリコンが悪いわけではない

 最初に、地味だけど大事なことをひとつ。

 シャンプーの成分としての「シリコン」は、厳密にはシリコーンオイルといいます。中心となる構成元素であるシリコン(silicon)を含む油状物質で、英語では silicone と書くため、シリコーンオイルないしはシリコーンというのが正確な呼び名です。ただ、本記事では、便宜上シリコンと呼ぶことにします。

 最近のシャンプーコーナーに行くと、ノンシリコンシャンプーが一角を占拠し、さもノンシリコンがブームのように思わせられます。そして宣伝ポップでは、シリコンを配合していないことを強調しています。他の棚の商品はシリコン入り、この棚のは入っていませんよ、と。なんだかシリコン入りのシャンプーは頭皮や毛髪に悪く、シリコンなしは正義といわんばかりです。

 しかし、商品説明のどこを見渡しても「シリコンは悪いです」とは書いてありません。

 それもそのはず、シリコンは無害です。まず、アレルギーすら起こしません。この点では、界面活性剤など他のシャンプーの成分で、シリコンより刺激がないものは存在しません。油と界面活性剤で刺激性を比べるのはナンセンスですが、少なくとも皮膚刺激性はありません。

 それでは、シリコンが皮膚にくまなく広がって呼吸を妨げたり、皮脂の代謝を邪魔したりすることはあるのでしょうか?

 まず、人間は皮膚で呼吸していません。これは医学では当たり前のことなのですが、なぜか皮膚呼吸をしていると信じている人が多いのです。もっとも、皮膚を覆ってしまって、皮膚の常在菌が窒息死してしまうとすれば問題です。彼らの大半は酸素を好む好気性細菌であり、酸素をある程度取り込まないと死んでしまったり、皮膚に害のある成分を生み出したりします。

 しかし、その点も問題ありません。シリコンは皮膚の上では細かな網目状に広がっており、完全に覆っているわけではないからです。

 では毛穴に詰まって、正常な代謝を阻害するのでしょうか? それについても、多くの実験により無関係とされています。一部で「有害だ」と叫ぶ人もいるかもしれませんが、十数年前の論文から最近の論文まで論調は変わらず、医学者や生理学者の多数決では「無害」となっています。そもそも豆腐の剥離剤にも使われていますし、創傷治療に傷口に高粘度のシリコンを使うことがあるくらい人体に無害です。

 しかし、シリコンも万能ではなく、ただひとつ問題点があります。同時に利点でもあるのですが、シリコンは油にも水にも馴染まない、人間にとっては、ただ安定して乗っかるだけの物質です。

 かつてシリコンの安定性、人体への親和性の高さなどを過信し、あらゆる化粧品からシャンプーまで必要以上に配合された時期がありました。その当時は、シリコンの製法が安定していなかったために不純物が入ったり、シリコンに別の成分が溶け込み、それが皮膚に定着して刺激が強まるなど、シリコンが直接原因ではないものの、シリコンが悪いという風潮になったことがあったそうです。

水にも油にも溶けない上に、界面活性剤にも強いため、落とす場合には専用クレンザーを使わなければいけないのですが、現在はシリコン系の化粧品などには専用のクレンザー(化粧品落とし)が売られているので、そういったものを使えば、トラブルは極めて少なくなっています。

 ちなみにシリコンは、シャンプーに使われるあらゆる成分の中で、最も高額な素材だったりします。1kg当たりの値段で比較すると、植物油は200〜300円程度、ラウリル硫酸塩やラウレス硫酸塩なども300〜400円以下ですが、シリコンは4000円前後もします。故に、安物商品ほどシリコンを入れると原価率が上がってしまうので、シリコンを悪者にしたいという誰かの思惑が見え隠れします。

 実際に、美容院などで使われるコンディショナーには、うまくコントロールされた粘度のシリコーンオイルが多く入っており、お値段も相応にしますが、ドラッグストアで売っている安物製品に比べ、髪の毛が驚くほどしっとりするのは、ご存じのとおりです。高い=良いという短絡的な話ではありませんが、プロが愛用するようなきちんとした商品ほど、シリコンの特性をしっかり生かし、シリコンが多く含まれています。

 ちなみに、私はクセ毛をまとめるために、シリコンを粘度別に4種類仕入れ、それを自分用に配合して使っていますが、頭皮にダメージらしいダメージはありません。だから誰にも安全とはいいませんが、少なくともそれほど気にする成分ではないというのは、私だけでなく、多くの実験が物語っています。

●ノンシリコンシャンプーとはなんなのか?

 それでは、実際にノンシリコンシャンプーとやらを化学の視点で考察していきます。

 医薬用部外品ではないこれらの商品には、原材料が配合量の多い順に書いてありますので正体がよくわかります。全体の数十%を占める水は材料の筆頭になるわけですが、水はさておき、そのほかの成分を見ていきましょう。